大阪と京都にあるカウンセリング機関(臨床心理士)/女性ライフサイクル研究所フェリアン。講演・研修、研究・執筆活動なども行っています。

「マインドフルネス」という言葉を聞いたことはありますか? 最近、メディアなどでも取り上げられることも増え、一度は耳にしたこともあるかもしれません。
「マインドフルネス」とは、今の瞬間に常に気づきを向け、あるがままに知覚し、それに対する思考や感情にはとらわれないでいる有様をいいます。

「マインドフルネス」な状態というのは、単純に言えば、その一瞬に全力を傾けることができている状態で、とてもシンプルな定義ですが、これを実践するのはなかなか難しいものです。
というのも、私たちが何かを知覚するとき、ほぼ自動的に解釈したり、評価する思考が起こり、同時に、好き嫌いなどの感情が加わったうえで認識が成立します。しかし、そうしたことの多くは個人的なバイアスがかかり、現実をあるがままに知覚するのは困難になります。
そうならないようにするには、今の瞬間に常に意識を向けるようにし、余分な思考や感情が生まれてきたらそれを自覚しつつ、また今の瞬間に意識を戻すということを繰り返し練習することで、「マインドフルネス」を得ることができるようになります。

「マインドフルネス」は仏教の教えに根ざしたもので、なかでも「マインドフルネス瞑想」は、ブッダの説いた呼吸を見つめる瞑想法がベースになっています。
「マインドフルネス瞑想」にはいろんなやり方がありますが、井上ウィマラ氏のワークショップで体験した方法をご紹介すると、

1.あぐらをかいて座り、背筋を伸ばして、視線を下に向ける。
2.呼吸をコントロールせず、呼吸の長短などを見つめる。
3.想念が湧いてきたら、何が起こっていたのか、ありのままに確認し、良し悪しを判断しない。
4.その想念が体のどの部分にどのような影響を与えているか感じ取る。
5.姿勢やバランスの崩れを確かめ、整え、ゆっくり優しい気持ちで呼吸に戻る。

「マインドフルネス瞑想」は、姿勢、動作、感覚、思考、感情など、心身の相関関係を含めたあらゆる対象を自他の視点から見つめ、主観的観察、客観的観察、間主観的観察の三つの視点から見守ることで、気づきや洞察が誘発され、生きにくさの解消や他者を慈しむ思いやりが生まれると言われています。
また瞑想中に湧き上がってくる想念にどう対応しているかを自覚することで、無意識に内在化させてしまっている両親の価値観や何世代にもわたる対象への関わり方の癖への気づきを促します。

「マインドフルネス」はPTSDや難治性のうつ病の治療や再発防止に効果が高いことでも注目されています。
PTSDでは、恐ろしいイメージを思い出すことは苦痛を伴うため、思い出させるものすべてを避けようとします。けれども深呼吸や体を動かすことで肉体状態をある程度コントロールできるというのを学べば、自分の内的感覚が常に移り変わることに気づき、思い出して身体で感じることへの恐怖が軽減されます(コーク、2006)。
うつ病では、過去のことを悔やんだり、将来のことを悲観しがちですが、どんな気持ちが浮かんでも、一過性に過ぎないと考え、ネガティブなイメージからうまく距離を取ることで、悪循環になりやすい気分の落ち込みや不安から解放されていきます。

他にも、「マインドフルネス」を続けると、集中力や記憶力がアップし、創造性が向上し、幸福感、リラックス感が高まり、ストレスを減らすことが実証されています。
様々な効果が期待できる「マインドフルネス」。1日1回、瞑想する時間を持ってみてはいかがでしょう?

参考
京都行動療法研修会 井上ウィマラ「マインドフルネス瞑想」
於:京都烏丸コンベンションホール 2016.7.30
コーク、2006「PTSDにおける脳科学研究の臨床への考察」

(2016年8月)

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