大阪と京都にあるカウンセリング機関(臨床心理士)/女性ライフサイクル研究所フェリアン。講演・研修、研究・執筆活動なども行っています。

自傷行為とは、「自らの身体を意図的に傷つける行為」を指します。皮膚を切る行為が最もよく知られていて、その典型が手首をカッターなどの刃物で切るリストカットです。その他にコンパスなどで手の甲を刺したりタバコの火を押し付ける、自分の頭や顔をこぶしで殴る、壁に頭をぶつけるなど、さまざまな自傷行為があります。

身近にいる大切な人が自傷行為をしていることに気づいたとき、非常に驚かれることと思います。「どうしてそんなことをするのか?」と理解に苦しみ、なんとかしてやめさせたいと思うのは自然な気持ちでしょう。

大変紛らわしいのですが、自傷行為と自殺というのは違います。自殺は何をやっても駄目だという絶望感と無力感があり、この苦痛を終わらせるための唯一の方法としてなされるのに対して、自傷行為は一時的に精神的苦痛を紛らわせるためにおこなわれます。ですから、自殺が死ぬことを目的にしているのに対して、自傷行為は、生き延びるための行為ともいえます。

しかし、ここで死のうと思ってやってるわけじゃないなら大丈夫だろうと思うのは間違いです。今を生き延びるための手段が繰り返されていけば、いつの間にか積極的ではなくとも自死を望む行為となっていきます。自傷行為をする人は、とても苦しくて生きるのがつらいと思っています。そのため何もせずに、放っておくと、「死んでしまいたい」「消えてしまいたい」と自殺へつながっていく危険性が非常に高いものです。

これまでは、リストカットするのは、「周囲の関心を得るため」や「アピール的な行動」と捉えられてきました。しかし、これは誤解です。なぜならその多くは、家族にも友だちにも知られないように行われるからです。もちろん中にはもっと関心向けてほしいということもあるでしょうが、それよりは、不安な気持ちやイライラした気持ちを抑えたり、心の痛みを体の痛みで蓋をするためにやっていると理解するのが良いかと思います。

 

自傷行為をする理由として以下のようなものがあげられます。

 

理由①急激にわき起こる気持ちを痛みによって断ち切るため

不安や絶望、強い怒りなど自分ではどうしようもないような強い感情に襲われた時に、リストカットすることで抑えようとするものです。溜まった感情から解放され、スッキリすることもあります。また、空しさや生きていることが実感できない時に、生きていることを実感するために切るという人もいます。

 

理由②心の痛みを体の痛みで和らげるため

強い精神的な苦痛を被った時に、身体に痛みを生じさせることで、心の痛みを感じないようにします。そうすることで一時的につらい気持ちから逃げることができます。

 

理由③自分を罰するため

自責感が強く、「自分が生きていることが罪だ」「自分は悪い子だから」と、自分を罰するために自傷行為をすることもあります。

 

理由④自分のつらさをわかってもらえないため

家族や恋人、友人など、重要な他者に自分の苦しさやつらさをわかってもらえないために、二次的に派生したものである場合もあります。

 

自傷行為の多くは、誰かに助けを求めるというよりも、「誰の助けも借りずに、つらさに耐え、苦痛を克服するための対処法」であるといえます。

 

自傷行為に至る背景

 

自傷行為に至るには、それだけの傷つき体験があります。家庭内が過酷な状況であったり、友人関係がうまくいっていなかったり、学校や職場でいじめにあいながら、誰にも言えないでいることもあります。大切な人の死などの喪失体験があり生きているのがつらいということもあります。自傷行為の奥には、深い孤独や怒り悲しみが隠されています。

自傷行為をする人は、自分に自信が持てず、自分のことを好きになれないために、傷つけても構わない、こんなダメな自分は罰を受けないといけないと考えます。ダメなところもあるけれど、いいところもあるし、まあいいのではと思えればいいのですが、ひとつでもダメなところがあると、全部ダメという0か100か、白か黒かの考え方をしてしまいます。

絶対に失敗は許されないと思うので、周囲からの期待にプレッシャーを感じやすく、そのせいで緊張してうまくいかず、「やっぱり自分はダメだ」と落ち込んでしまいがちです。

また、人間関係で傷ついていることが多く、周りの人を信用できないところがあります。信用して裏切られて、傷つくぐらいなら、初めから信じないようにしようとします。そのため「助けてほしい」となかなか言うことができず、自分自身でつらい気持ちを解決しようとして、自傷行為に走ってしまうというのです。

 

自傷行為を見つけたとき、どのように対応するのが良いでしょう?

 

①傷の手当をする

まず、応急処置をしっかりします。清潔なガーゼで止血して、消毒し、包帯などで傷の保護をします。傷の手当てをして、身体を気づかうことが、「傷つけてはいけない」というメッセージになります。もし深く切って、出血がひどいときには、すぐに医療機関へ連れて行きます。

傷の手当てが心のケアの第一歩です。「こんなひどいことをして」と言葉で言わず、手当を通じて、「体を大切にする」ことを伝えます。

 

②本人の話をよく聴く

リストカットなどを見つけると、「なんで、こんなことをするの?」と「何が気に入らないの?」「どうしてほしいの?」と尋問みたいになってしまいがちですが、それは良くないやり方です。本人にすれば、気持ちを言葉にできないから、自傷行為というのをしてしまうのです。

問いただすのではなく、本人が話し出すのを待って、少しでも話してくれたら、「よく話してくれたね」と励ましましょう。「訊く」ではなく「聴く」態度で接します。

 

③ほどよい距離を保って接する

ほどよい距離を保つというのは、相手を尊重しつつ、必要な時にはすぐに手を差し伸べることができるというものです。

自傷行為に注目し「私が何とかしなければ」と思いすぎるのもよくないですし、「死ぬことはないだろう」と軽くあしらったり、見てみないふりをしたり、その話題を避けようとするのもよくありません。その行為の派手さに目を奪われるのではなく、本人の気持ちに注意を向けるというのが何より大切です。

 

④責任を背負いすぎない

自傷行為を見つけると、「どうしてもっとつらい気持ちに気づいてあげられなかったんだろう」と自分を責めたり、「接し方が悪かったんだろうか」と責任を感じてしまったりしがちです。また口論が引き金になっているときには、「あんなことを言ってしまったからだ」と、後悔してしまうこともあります。

そして、責任を感じると、「私が何とかしてあげなくては」と強く思うようになりますが、それでうまくいくことはまずありません。

 

⑤自傷行為を止めさせることだけに躍起にならない

自傷行為というのは、氷山の一角で、その奥には、対人関係のゆがみであったり、親との関係であったり、本人の性格傾向など、いろんな問題が隠されています。見えている傷の裏に見えていない深刻な傷つきがあります。

ですから、自傷行為を止めさえしたら解決というものではありません。問題が解決するのには、長い時間がかかると覚悟してください。強く叱ったり、力づくでやめさせると、確かに止める場合もありますが、そうすると、必ずほかの問題行動が出てきます。「自傷行為をやめさせる」ということにこだわりすぎず、その行為を通じて、何を訴えようとしているのか、何に躓き、困っているのかを読み取り、理解し、本人が問題を解決していくのを支えていこうとする姿勢が大切です。

あせらず、あきらめず、何度言ってもダメだと見捨てずに、根気よく関わっていけば、必ず変わってきます。できるだけ本人のいいところや頑張っているところを見て、励ましていきましょう。

 

自分自身がリストカットをしていて、その行為をやめたいと思っても、やめることができないというときや、身近な人が自傷行為をしていてどう対応していいかわからないというときには、フェリアンにご相談ください。

ひとりひとり抱えている問題や事情は違うでしょうが、そうせざる得ない気持ちに気づき、適切な対処がなされれば、必ず変化は訪れます。

フェリアンのカウンセラーは、あなたの悩みに寄り添い、解決の道を探っていきます。

 

※自傷行為の衝動は、お薬を飲むことでコントロールできることもあります。医療が必要かどうかについてもご相談ください。

※自殺企図があるなど命の危険がある場合は、カウンセリングを受けられないこともありますのでご了承ください。

参考文献

松本俊彦『自傷行為の理解と援助』(2009)日本評論社

(2017年9月)

 

カウンセリングのお問い合わせ、ご予約

電話06-6232-8345 (月~金 10:00~17:00)

フェリアン京都でのカウンセリングも上記電話番号で受付。

メールはこちらからどうぞ。