エッセイ
通勤風景/前村よう子
月曜日から土曜日まで、学校に出勤する日はたいてい朝4時45分に起床する。サッと入浴し、身支度を整え、6時10分台の電車に乗って通勤している。
と、このように書くと早起きが得意だと思われがちだが、それは違う。「朝湯」は好きだが「朝寝」も好きなので、仕事や出かける用がないという日は、ほおっておくと昼過ぎまで平気で寝続けている。
ではなぜ、早起きして早朝出勤しているのか。答えは簡単である。ただ電車内で座って、爆睡しながら出勤したいだけなのだ。自宅最寄駅から学校まで、乗り換えがスムーズであれば1時間15分くらいで行ける。おそらく首都圏の方にとっては「普通」の通勤時間だろうと思われるが、他の地域では「遠くまで仕事に行っている」ことになるのではなかろうか。
とにかく「眠る」ことに重点を置いているので、それが可能な電車に乗るためには、この時間に出勤するしかないのだ。しかし最近は、この時間帯であっても座れないことがある。それだけ多くの方々が早朝から出勤されているということなのだろう。
さて乗り換え時、まだ時刻は6時45分頃なのだが、駅は大混雑している。そんな中で最近、周りを見回して多くの人がとてもしんどそうな顔をしているのに気付いた。インフルエンザも流行しているし、早々に始まった花粉症の影響もあるのだろうが、それにしても辛そうだ。「仕事がしんどい。職場に行きたくない」そんな空気が駅全体に蔓延している気がする。
ひょっとしてこれは写し鏡で、仕事に行きたくないのは私自身なのだろうかと問うてみたが、1年生の副担任である今年、そんな風に思ったことは一度もなかった。大変な側面が全くなかったとは言えないが、行きたくないなんて思わずに過ごしてきた。ではやはり、仕事をしんどいと感じている人が増えているということなのだろうか。
実際、勤務校に限らず、また学校現場に限らず、仕事がしんどい、職場に行くのがつらいという声はあちこちで耳にする。と同時に、家に帰るのがつらいという生徒の声も、学校に行くのがつらいという声と同じくらい耳にする。
つらいこと、しんどいことは多いけれど、それでも前に進まなきゃ。本当にそうなのだろうか。時には止まって休んで、場合によっては逃げてもいいのでは。通勤風景を見ながら、そんな風に考えた朝であった。
(2016年2月)