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性被害のトラウマ/下地久美子

 性暴力とは、本人の意思に反し、望まない性行為がなされることを指します。中には暴力をふるわれ抵抗できないようにされたり、飲み物に薬を入れられ意識のない状態で被害にあうこともあります。「誰かに話したら、ひどい目にあわせる」と口止めされていたり、上司と部下のように力関係があり逆らえない場合もあります。

加害者の約8割が友人や知人など顔見知りであると言われ、たとえ夫婦や恋人同士であったとしても、無理強いされるというのであれば、それは性暴力です。

性被害のようなショックな出来事はトラウマになりやすく、こころとからだに深刻な影響がもたらされます。以下のような反応が、被害後すぐに表れることもあれば、しばらくたってから出てくることもあります。「再体験(フラッシュバックなど)」「回避」「過覚醒」等の症状が1カ月以上続くときには、PTSDと診断されることもあります。

性被害のトラウマの影響

こころへの影響

感覚や気持ちが麻痺して何も感じられなくなってしまうこともあれば、「また同じようなことが起こったら」という恐怖感や不安、「どうして逃げなかったんだろう」という自責感に苛まれたり、「自分が汚れてしまった」という感覚がぬぐえなくなることもあります。

また、突然強い怒りが湧きコントロールできなくなることもあるでしょう。

思い出したくないのに何度も被害のことが頭に浮かんできたり、怖い夢を見ることもあります。何をしても楽しいと思えず、死んでしまいたい気持ちに襲われることも少なくありません。

ちょっとしたことに過剰に反応したり、イライラして集中力が続かなくなることや、体が浮いているように感じ、まるで現実感がないように思えたり、世界に膜がかかっているように見えるというのもあります。

からだへの影響

食欲がなくなる、夜眠れなくなる、頭痛やめまいがする、吐き気、下痢、便秘、腹痛、背中や腰の痛み、手足の倦怠など、からだにさまざまな不調が出ることがあります。

のどが圧迫されて息がしづらいと感じたり、心臓がドキドキしたり、過呼吸の発作が現れる人もいます。

社会生活への影響

外出するのが怖くなり、仕事や学校に行けなくなってしまうこともあります。また人と会ったり話したりするのがつらいと感じ、親しい人との関係を狭めてしまうということもあるでしょう。誰のことも信用できず、この先安心して暮らすことができないと思えたり、自分は他の人とは違うという孤立感を深めることもあります。

被害を思い出すのが怖くて、新聞やテレビを観ることができなくなったり、今まで好きだったものや趣味にも興味がもてなくなってしまうことも珍しくありません。

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性被害にあったときに思いやすいこと

 このような変化が起きると、「自分がおかしくなってしまったんじゃないだろうか。もう元の自分には戻ることができないのでは」とひどく落ち込んでしまうのものです。でも、これらは、非常にショックなことが起きたときに現われる自然な反応です。とてもつらくて立ち上がれないように感じているのは、起こったことがあまりに大変な出来事だったからです。

 被害にあった人は、ともすれば「あの時、もっとこうしていれば」と、自分を責めがちですが、悪いのは加害者です。被害者には何の責任もありません。

 嫌なら密室や車内で二人きりにならないはず、本気で抵抗していたらそうはならなかったのではという心ない声や風潮のせいで、どれほど被害者が傷つけられてきたことでしょう。拒否したにもかかわらず、強制的に加害を加えた相手にこそ責任があるのです。

性被害のトラウマからの回復のために

つらい経験をすると、気持ちをうまくコントロールできなくなったり、思うように生活できないと感じることがあるかもしれません。それでも今何とか生活できていることも頑張っていることです。できているところを認めるようにしましょう。

 自分の体をいたわり、きちんと食事をとり、お風呂に入り、十分な睡眠をとるといった日常生活をゆっくり心がけることが大切です。

 すぐには難しいかもしれませんが、好きな音楽を聴いたり、アロマオイルを焚いたり、深呼吸をしたり、好きな場所を散歩したり、きれいな写真を見たり、ストレッチをしたり、自分のペースでリラックスできることを取り入れていくことも、心の安定につながります。

 性被害は、誰にも相談できず、自分一人で抱えてしまうことが多いものです。誰かに話したことで、余計につらい思いをしたという場合もあるでしょう。性被害によるトラウマは、心の奥深くに残りやすく、一人で向き合うのはかなり苦しいものです。

フェリアンでは、性被害にあった方に寄り添い、共につらい出来事に向き合い、少しずつ前に進んでいけるよう、お手伝いしています。

 また、家族や大切な人が被害にあい、どう関わればよいかわからないというときも、ご相談ください。身近な人の支えが、何より安心を与え、傷つきからの回復を助けます。フェリアンのカウンセラーは、被害にあった方が二重に傷つくことがないよう、適切な助言をいたします。

トラウマについて、詳しくは、こちらの記事もご覧ください。

トラウマ(心の傷)、PTSDで悩んでいる方へ

参考文献

「性犯罪被害にあうということ」小林美香(2008年)朝日新聞出版社

「一人じゃないよ あなたのこれからのための支援情報ハンドブック」(独)国立精神・神経医療研究センター(2014年)

(2018年1月)

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