カウンセリング
ひきこもりからの回復をサポートするカウンセリング
フェリアン大阪・京都では、引きこもっている方や、家族をサポートをするカウンセリングを行っています。
「ひきこもり」の定義
「ひきこもり」とは、診断名や病名ではなく、状態像を示す言葉です。「ひきこもり」という現象は、義務教育を含む就学、非常勤を含む就労、家の外での仲間との交友などの社会生活を避けて、6カ月以上にわたって概ね家庭にとどまり続け、社会参加しない状態が持続していることをさします。 「ひきこもり」の原因は様々ですが、最初のきっかけは「不登校」から立ち直るチャンスを逸し、成人になったということが多いようです。20代後半までに問題化し、他の精神障害がその第一の原因とは考えられないというのが「ひきこもり」の定義になっています。 背景に「発達障害」がある場合や「統合失調症」による病状であることに気づかれないまま「ひきこもり」状態が長引いていることもあります。
ひきこもる期間が長くなるほど、再び社会とつながりを持つのは難しくなりがちですが、「ひきこもり」の背景や意味を理解しながら、適切に関わっていくことで、自分らしい生き方を見つけていくことができます。
「ひきこもり」の原因
「ひきこもり」には、一言でいえるような原因はありません。きっかけとして、学校での挫折体験や成績不振、受験や就職活動の失敗、いじめられ体験などが挙げられますが、そうした外傷経験が、これほど長く影響をもたらすのは、「ひきこもり」が長期化することで、外傷が外傷を生み出すような悪循環のシステムに、からめ捕られていくためではないかと言われています。 つまり、外傷やストレスは、他人から与えられるものですが、ひきこもることで対人関係によって補われるはず回復の機会も奪われてしまうというのです。他者からの援助を受けることなしに外傷からの立ち直ることは難しく、他者との接点を持たないことで、悪化させていくわけです。 また、家族以外のセーフティーネットが乏しく、社会の中での問題や歪みを家族に封じ込めてきた日本の社会システムの問題も背景にあります。他人に迷惑をかけないよう、恥をさらさぬよう閉鎖性を保ち続け、変化を拒んできた結果が、「ひきこもり」という形を取っているともいえます。
「ひきこもり」にともなう症状
「ひきこもり」には、様々な症状がともなうことがあります。対人恐怖(自己臭、醜形恐怖を含む)、被害関係念慮、強迫症状、家庭内暴力、不眠、抑うつ気分、自殺念慮、摂食障害、心身症状などです。 特に「対人恐怖」は、全体の約8割に見られ、近隣の住民やかつての同級生など、多少の顔見知りを最も恐れます。周囲からの視線を怖がる「視線恐怖」や自分が臭いにおいを発しているのではないかと気にする「自己臭」、自分の顔が周りを不快にしているのではと悩む「醜形恐怖」が増えています。 「強迫症状」で、最も多いのは不潔恐怖をともなう洗浄強迫で、長時間手洗いを繰り返したりします。何度も確認しないと気がすまない確認行為や本人には意味のある儀式的な行為、言葉のタブーなどへのこだわりもよく見られます。 「家庭内暴力」は、半数の「ひきこもり」家庭で起こっていると言われています。親の態度が気に入らないと言っては暴れ、壁に穴が開き、家中が破壊されるのも稀ではありません。親が骨折などのけがを負うこともあります。暴力はエスカレートするので早めの対応が急務です。 「抑うつ気分」や「希死念慮」の訴えもよく聞かれますが、後悔よりもやり直したい気持ちの方が強く、その願いをうまくキャッチして、本人にとって、心地よくいられるのはどうするのがいいを考えながら関わっていく姿勢が大切です。
「ひきこもり」の道しるべ~十人十色の道筋
「ひきこもり」のあり方も、そこから新たな道を見つけていく道筋も十人十色ですが、道しるべもない不安な中で、中長期的な視点で、見守っていくということがどれだけ辛く大変なことかということを親御さんのカウンセリングを通して実感してきました。ご本人やご家族の見通しや支援のヒントとして活用いただければ幸いです。※このような道筋を通らない場合もあります。
初期:(混乱期)
- 登校渋り、出社渋りがみられる。ストレスサインを出しながら、しばしば休みたいという。
- 身体症状を出し、行こうと思うけど行けない。
- 急に行かなくなる。動かなくなる。(理由や気持ちはわからない)。
- 対人関係が狭まる。
親は、不安になり、必死に働きかけをする時期ではありますが、本人に詰め寄らず、環境調整が重要な時期です。本人の状態を「怠け」「わがまま」「甘え」と見なしていると、状況の改善は困難になります。第三者の意見を聞いたり、本人の様子を観察し、状況に応じて休ませたり、環境改善をしたり、ストレッサーを減らすことが役に立ちます。
中期:(退行期)
- 昼夜逆転がスタート。
- 自室にこもりがち 寝ていることが多い。
- 家庭では「腫れもの」扱いになりがち。
- 対人関係の遮断。
他者や外界との接触を避け、自分の世界に引きこもり退行していく時期で、親子共にとても辛い時期です。親としては、毅然とした態度をとるべきか受け入れるべきか、葛藤し、揺れる時期でもあります。この時期には家庭内で暴力も起きやすいため、親は相談できる人や場所、サポーターを見つけることが重要です。
後期:(前向きなエネルギーが少しずつ出てくる時期)
- 生活リズムが戻ってくる。
- 好きな活動だけは始められる。
- 模様替え、お手伝いなどをするようになる。
- 暇だという感じが出てくる(エネルギーがたまってきたサイン)。
- 家族の一部の人との交流がスタート。
- 買い物や身だしなみを少し気ににするようになる。
- 親の気持ちや反応を気にする。コミュニケーションを求める。
無理強いは禁物ですが、本人の興味や、やりたいことを中心に、会話や自宅でできる活動などを工夫する時期です。あくまで、本人の好きなことを本人のペースで尊重することが大切です。ここまで辛抱してきた家族としては、色々言いたくなり、一気に引っ張りたくなる心境にかられることと思いますが、自発性を大事にすることが重要です。
出口期:(出口に向かうも、先行きの不安が出てくる時期)
- 家では普通に生活が出来る。
- 家族以外の人との交流を見つける。
- 家庭以外の居場所を見つける。
- 先行きの不安が出てくる。
家庭から一歩外へと向かうも、今までとは異なる不安や問題に直面するため、まだまだデリケートで疲れやすい時期です。行きつ戻りつしながら進んでいくものですから、子どもの言動に一喜一憂しないようにしましょう。ここでは、本人が、自分のペースを大事にしながら、問題解決方法やストレス解消法などを一緒に考え、伴走してくれるサポーターとつながることが役に立ちます。 カウンリング機関、都道府県や市や区の福祉機関、民間やNPOの支援者や居場所、ミーティング、人生の先輩や親の会、習い事、趣味など第3の場(サードプレイス)をみつけ、つながってみましょう。
サポ―トを得る
子どもがひきこもることは、親にとっても辛く、将来への不安や世間の目を気にして、親も社会とのつながりを断ちたくなることも少なくありません。しかし、家族で抱えこんでいるうちは、出口がみつかりにくいものです。出口をみつけていくためには、まずは親御さんが自分にあったサポートを得ましょう。
ひきこもっている本人も、その状態をよいとは思ってはおらず、なんとかここから抜け出したいと望んでいることが多いものです。フェリアン大阪・京都では、「本人」にとって引きこもりの意味や必要性は何なのかを、家族や本人と共に考えていきたいと思っています。そして、どうすれば少しでも楽になるか、生きやすくなるか、元気になるかを共に考えながら、スモールステップを丁寧に積み重ね、自分らしく生きていく術や道を見出していくことのお手伝いをしていきたいと思っています。
また背景にいじめられ体験などのトラウマがあったり、症状が強い場合には、トラウマや症状軽減のためのカウンセリングを通して、本人へのサポートができればと思います。
参考文献 『ひきこもりはなぜ「治る」のか?』斉藤環(中央法規出版)
『ともに生きともに育つひきこもり支援―協同的関係性とソーシャルワーク』山本耕平著