カウンセリング

DV(ドメスティック・バイオレンス)に悩む方へのカウンセリング

ドメスティック・バイオレンス(DV)に悩む人へのカウンセリングをフェリアン大阪・京都では実施しています。

DV(ドメスティック・バイオレンス)とは

DVとは、親密な関係において、身体的、経済的、社会的に優位にあるものが、パートナーに対して、その権力をふりかざして暴力をふるうこと、相手を支配したり、コントロールしたりすることです。体力、経済力、社会的影響力の強さなどの力を用いて、弱い立場の者、多くは女性を支配するのです。この力の差というのは長く続いた男性優位の社会構造に根差しています。つまりDVというのは、個人の問題ではなく、社会問題なのです。

暴力の内容は、殴る蹴るなどの身体的暴力のほか、心理的暴力、社会的暴力、経済的暴力、性的暴力などがあります。身体的暴力は、殴る、蹴る、掴む、つねる、髪を引っ張る、揺さぶる、頭を打ちつける、体を持ち上げて投げつける、首を締める、刃物やその他の武器を使うなど、さまざまです。暴力を振るうことをほのめかす脅しだけでも、十分に女性を怖がらせ、従わせることができるでしょう。

  • 心理的暴力は、大声で怒鳴ったり、「お前はバカだ」と見下したり、「俺の言うことを聞かないとどうなるかわかっているだろうな」と脅したり、また無視する、大切な物を壊すなどの暴力です。
  • 社会的暴力には、友だちに会ったり電話したりするのを細かく監視する、実家との付き合いを制限する、外出させないなどがあります。
  • 経済的暴力は、生活費を渡さない、貯金を勝手に使うなどがあげられます。
  • 性的暴力には、望まない性行為の強要や、避妊に協力しない、見たくないポルノを見せるなどがあります。

これらの暴力は、いくつかが重なり合って起こることが多く、被害者にとっては、耐え難いものです。また、DVは、結婚している夫婦にだけで起こるのではありません。それは恋愛中のカップルにも見られ、交際中のカップル間で起こる暴力的な支配を「デートDV」と呼びます。

DVがもたらす影響

親密な関係の中で暴力が繰り返されると、心と体に様々な影響が出てきます。なかでも、DVが、PTSDの反応を引き起こすことが注目されています。PTSDというのは災害や事件・事故、自分の体に脅威が及ぶような出来事(トラウマ)を体験して強いストレスを受けた後で現れる症状です。

主な症状は再体験、回避・麻痺、過覚醒の3つです。再体験は、いやな場面がフラッシュバックしたり、悪夢を見たりします。回避・麻痺は、怖い経験を思い出させる人や場所を避けようとしたり、喜怒哀楽の感情を麻痺させたりします。過覚醒は、寝つきが悪い、些細なことで感情が爆発する、ちょっとした物音で飛び上がる、いつも過剰に警戒することです。

脅えや恐れの中で自分の本当の感情がわからなくなり、物忘れや記憶障害が起こることもあります。そんな中で、徐々に無気力になり、自分を大切にしようという気持ちをなくしていきます。もう自分なんかどうなってもいいというあきらめや絶望感でいっぱいになり、誰も自分の状況を理解し助けることはできないと、人間不信の気持ちが強くなります。

ストレスにさらされ続けることで、イライラしたり、根気がなくなったり、相手の言うように自分はダメな人間だと思い込まされて自己評価が低下し、「こんな自分だから、こうなっても仕方がない」と自分を責めてしまうこともあります。また誰にもわかってもらえないと人間関係を保つことも難しくなり、自分からひきこもりがちになり、孤立してしまいます。

他にも、うつ状態になったり、不眠に悩まされることもあります。頭痛、偏頭痛、めまい、吐き気、震え、睡眠障害、動悸、呼吸困難、胃痛、発熱、摂食障害など身体の症状に出たり、アルコール依存や様々な体の不調、自殺への思いが頭を離れなくなることもあります。

暴力から逃げ出せない理由

ひどい暴力を振るわれているケースでも、なかなか逃げ出せないことがあります。これは、暴力による支配があると、逃げ出したくても逃げられないような心理状態にさせられるからです。暴力が繰り返されると、何をしても無駄だという無力感が学習されます。これを「学習性無力感」といいます。

こんな実験があります。犬を檻の中に入れておいて時々電気ショックを与えます。そうすると最初は一生懸命に逃げようとするのですが、いつ電気ショックがくるかわからない状態が続くと、そのうちあきらめてしまい逃げ出さなくなってしまうわけです。これと同じことがDV被害者の女性にも起こっているのではないかと言われています。

またDVによる暴力は、いつも起こっているわけではなくて、緊張が高まる時期、爆発と暴力が起こる時期、穏やかな愛情のある時期と、3つのサイクルに従って起きます。第一相においては、男性が苛立ちをつのらせ、小さな虐待が繰り返されますが、女性の方はそれをなんとかなだめようと気を使い努力を続けます。

でも、その緊張は、徐々に度合いを増していき、第二相に移行し、大きな爆発が起こります。被害女性はしばらく虚脱状態に陥り、男性は、我に返り、後悔しはじめます。そして第三相では、男性は懺悔し、二度と暴力をふるわないと誓い、優しく愛情深い態度をとります。そのため、女性は「自分さえ我慢すれば何とかなる」と、夫を信じて新しい関係に賭けようと決めます。そうこうするうちに次のサイクルがやってきます。

DV加害者の特徴

DVの加害者は、見るからに乱暴そうな人というのは、少ないです。家庭の外では、人当たりがよくて、「いい人」に見えることが、よくあります。そのため、周囲からは、「あんな優しそうな人が暴力をふるうなんて」と、なかなか信じてもらえなかったりします。

<DV男性の特徴>としては、

  1. 男は男らしく、女は女らしくあらねばならないという意識が強い。
  2. 自己中心的(思い通りにしたがる)。なんでも1番でないと気に入らない。
  3. 子どもっぽい。
  4. 自分の母親との間に問題を抱えている。親が極端に過保護、または無関心だった。
  5. 傷つきやすい。自分に自信がないので、ちょっとした妻の言動が致命傷になり、逆に相手を貶めることで、自分を守ろうとする。
  6. 人間不信。人を信じられない。裏切られると思っている。嫉妬深く、疑り深い。

男は男らしくという教育を受けてきた男性は、自分が優位な時には優しい夫でいられるのですが、自分のプライドが傷つけられたり、思い通りにならない時に、自分の地位を守るために暴力によって支配しようとします。

これまで男性は、「弱音を吐くな」とか「男のくせに泣くな」と言われてきて、感情を表現することを禁じられてきました。誰にでも怒りの感情というのはあって当然なのですが、それをうまく言葉で表現できず、行動で表してしまうこともあります。

DVというのは、短気で怒りっぽくキレやすい性格のせいだけではなく、その人の持つ価値観が大きく関わっています。「妻は夫の所有物なので、気に入らなければ殴ってもよい」という考えを持っているから、DVが起こるのです。

ですからDVの加害者が、暴力をふるわないようになるためには、「考え方」や「価値観」を変えることができるかどうかにかかってきます。この価値観を加害者が自ら変えようとしない限り、暴力をふるわなくなる可能性は低いでしょう。加害者が変わるのでは?と期待し続けている間に、被害者は生活を変える元気がなくなってしまうこともあります。あきらめてしまう前に、立ち止まって、どんな方法があるか考えてみましょう。

DVから抜け出すには

DV被害を認める

DV被害から脱出する第一歩は、DVの被害を受けていることを認めることです。「たいしたことではない」「暴力というほどでもない」など、長い歴史の中で、家庭内で起こる暴力を軽く見る風潮ができ上がっているので、暴力被害を認めることは簡単なことではないでしょう。しかし、どんな理由があろうとも、暴力を正当化してはいけません。

繰り返しDV被害に遭うと、自分が正しいのか間違っているのか判断がつきにくくなります。深く傷つけられた人は、「彼の言うことを聞いてあげなかった私が悪いんじゃないか」と考える傾向があります。

まずは、「これはDVである」と認めることです。自分は被害者であると認められれば、「自分は悪くない」と考えられるようになります。「バカだ、のろまだ、と言われ続けるのはおかしいのではないか」「平手打ちされないといけないことは何もない」「友だちに連絡を取るのを制限される必要はない」と考えることにもつながっていきます。

安全を確保する

次に暴力被害に遭った女性に必要なのは、<安全の確保>です。何より身体の安全と心の安全が確保されなければなりません。そのためには、危険を認識する必要があります。DV遭うと「これぐらいたいしたことはない」と暴力を低く見積もりがちです。しかし、どんな理由があろうと暴力に耐えなければならないことはありません。身体の安全と心の安全は、すべての人に保証される権利です。

DVの暴力から逃れ、安全な生活を確保するためには、夫やパートナーと距離を取るのが一番です。かといって、すぐに別居や離婚の決意はつかないものです。すぐに別れないとしても、暴力の危険があるときにすぐに逃げ込める場所を調べて準備しておくことは、安全の確立につながります。

味方を探す

DVの被害者は、しばしば孤立した状態に置かれます。家庭の恥だと考え、人に話すのは恥ずかしいという気持ちも働きます。加害者に友だちづきあいや行動範囲を制限され親しい友人との関係が切れているために相談する相手がいないこともあります。DVの被害にあっているなら、まず、ひとりでも多くの味方を探すというのが大切です。知り合いの中で、誰が心配し、力になってくれるかのリストを作りましょう。

情報を集める

また、困ったときには、DVの専門機関へ相談して、今後どうすればいいか話し合ってみるのもいいと思います。全国の配偶者暴力相談支援センターなどに電話をして、今後どのようにしていけばいいか、相談しましょう。

緊急避難の方法や一時保護についての情報、離婚や避難をした際に利用できる福祉制度などの情報を集めましょう。

とにかく、ひとりで抱え込んで悩んでいても、状況は変わりません。思い切って、人に打ち明けて、DVから逃れる方法を考えることです。

◆DV相談ナビ

0570‐0‐55210(全国統一ダイヤル)

配偶者暴力支援センターなど、全国800箇所の相談窓口の電話番号および相談受付時間を教えてくれます。

◆全国共通DVホットライン

0120-956-080

毎日10:00~15:00(日・祝日、年末年始を除く)

家を出る

どんな理由であれ、暴力をふるわれることは我慢することではありません。危険な状況であれば、逃げることです。警察に通報してもいいし、近くの交番に逃げ込んでもいいでしょう。身を寄せられる場所がない場合は、一時保護施設を利用することができます。その間に、その後の生活の相談にのってもらえます。

どうせ何をやっても無駄だと思わず、暴力を受け続けないための行動を取ること。

緊急の場合に備えて、免許証、健康保険証や通帳、現金、実印など、大事なものをまとめておいて、いざというときにすぐに逃げられるようにしておくといいかもしれません。

暴力にじっと耐えるのではなく、いろんな人に協力してもらいながら、最善の方法を探すことが大切です。

安全な場所で心身の回復をはかる

DVの渦中にあるときは、その状況をやり過ごすことにすべてのエルギーが注がれ、ゆっくりと自分に向き合うことが難しいことがあります。また、DVから逃れた後に、「本当にこれでよかったのか?」と迷いが生じたり、ひどく落ち込んでしまうことも珍しくありません。安全な状況にいたってほっとしたときに、PTSDの症状や、うつ、不安に悩まされることもあります。子どもにも、症状が現れることもあります。

症状を和らげ、過去の体験を整理するためにも、一人で耐えるのではなく、カウンセリングを受けてみましょう。生活の問題に直面したら、問題解決に取り組み、環境に働きかけていきましょう。あなたの力を取り戻し、心理的、社会的、経済的自立への準備を整えましょう。

フェリアン大阪・京都では、DVの被害に遭っている方、またDVのトラウマに悩まされている方、身近な人がDVの被害に遭っていてどのように対応したらいいかわからないという方など、DVに苦しんでいる方の、カウンセリングをお受けしています。DVの中で、多くの人は孤立させられますが、人とつながり共感を得ることは、力となっていくでしょう。解決は、困難な道のりとなるかもしれませんが、より良い方法を一緒に見つけていきましょう。

DV被害のトラウマやPTSDからの回復については、こちらもご覧ください。

<参考文献>

村本邦子『暴力被害と女性』昭和堂(2001)

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