カウンセリング

子どもが性被害にあった

どの子どもも性被害にあう可能性があり、女の子だけではなく、男の子も被害にあうことがあります。親にとって、大切な子どもが性被害にあうということは、とてもショックなことです。しかし、子どもが被害にあったときの親の関わり方によって、その後の回復が大きく変わってきます。だからこそ、万が一、子どもが性被害にあったときの対応について知っておくことは、大事なことだと思います。

●子どもへの性暴力
子どもへの性暴力の加害者は、最初はフレンドリーに近づいていき、安心させたうえで、性暴力をおこなうことが多いと言われています。子どもはわけがわからないまま同意してしまうこともありますが、同意したとしてもそれは性暴力です。
「二人だけの秘密だよ」「言ったらおうちを追い出されるよ」「お父さんとお母さんがいなくなってしまうよ」などと口止めされ、話したくても話せないこともあるでしょう。
また、年齢が幼い場合、自分に起こったことの意味がわからず、思春期になって、その意味を知り苦しむということもあります。

●性暴力の加害者
子どもへの性暴力の加害者は特別な人ではなく、祖父母や父母、親戚、きょうだい、習い事の先生、近所の人や親の友人など、知り合いがほとんどです。子どもにとって、好きな人であったり、大切な人である場合が多いため、そのことを受け入れられず「なかったことにしよう」としたり、親に怒られると思って言い出せないこともよくあります。

●性被害にあった子どもに見られる行動
性被害にあった子どもには、以下のような症状がみられることがあります。

夜眠れない、暗闇を怖がる、学校や幼稚園・保育所への登校しぶり登園しぶり、食欲がない、夜尿、赤ちゃん返り、突然怒りだしたり泣き出したりする、元気がない、家出、集中力がない、自分自身を傷つける、友だちに性的な行為をする、異様にテンション高くなる、大人にべたべた甘える、性的な話題に年齢不相応な興味を持つ、記憶が飛ぶなど。 

これらはほんの一部で、他にも様々な症状が出てくるかもしれません。また、表面的には何も変わった様子が見られず、問題ないと感じられる場合もあります。しかし、今は何も出てこなくても、思春期や大人になってから症状が出ることもあります。

●子どもの気持ち
被害にあった子どもは、被害にあったことを恥ずかしいと思ったり、自分が汚れてしまったと感じたりします。自分が悪いからこんな目にあったんだと思う子どももいます。
見知らぬ人が加害者の場合、親からも学校からも「知らない人についていってはいけない」と言われているのについていったなら、「あんなところに行かなければ」「相手を信用しなければ」と自分を責めてしまうこともあるでしょう。
勇気を出して話した後の大人の反応に傷つき、「あれは嘘だった」ということもあります。子どもの気持ちは揺れ動き、言うこともそのときどきで変わることは珍しくありません。

●親や周りの人が気をつけたいこと
親としては、子どもの言うことを信じたくないと思うこともあるでしょうが、一番大事なのは子どもがこれ以上傷つかないよう守ることです。
①子どもが被害のことを話してくれたら、まず「話してくれて、ありがとう」と伝えましょう。
②必要な場合、すぐに医療機関でのケアを受けてください。
③食事や睡眠など子どもが安心してふつうの生活が送れるようにすることが大切です。
④子どもをひとりにしないで、できるだけ側にいるようにしましょう。
⑤よく子どもの話を聴いてあげてください。「いい」「悪い」で判断するのではなく、「そうなんだね」と受け止めてあげましょう。親に聴いてもらって、うなずいてもらうだけでも、子どもは安心します。
⑥子どもが出してくるさまざまな症状を当然のものと受け止めてください。赤ちゃん返りや眠れないなどが続くことがあるかもしれませんが、子どもは安心できると必ず落ち着きます。
⑦どんなに心が乱れても、「そんなのあり得ない」「どうしてすぐに話してくれなかったの」「あなたが不注意だった」「なぜ逃げなかったの」など子どもを責めたりする言動は決してしてはいけません。
⑧「早く忘れなさい」「あなたは強いから大丈夫」という声掛けは、子どもが悩みや弱音を吐きづらくさせてしまうことがあります。
⑨「あなたは悪くない」「あなたの味方だよ」と、子どもを信じ、力になりたいと思っていることを少しずつ伝えていきましょう。

子どもが性被害にあうと、親も非常に傷つきます。まして加害者がパートナーや被害者のきょうだいである場合、冷静でいることは難しいでしょう。けれども親自身が落ち着くことによって子どもは安心します。

フェリアンでは、子どもが性被害にあった保護者へのカウンセリングを行っています。親自身が落ち着いて子どもを支え、子ども自身の回復につながっていくようサポートしています。

参考文献
窪田容子・村本邦子『子どもが被害にあったとき』三学出版
大阪教育大学学校危機メンタルサポートセンター「ほんとうはつたえたいことがあったんだ」
大阪市こども相談センター「あなただからできること」

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