エッセイ

球根/渡邉佳代

北風の吹きつけるベランダに、かさかさと音を立ててイチョウの枯葉が舞い、次々と鉢植えに入り込むので、少し厚着をしてベランダに出た。真っ黒く、しっとりとした鉢植えの土に重なる落ち葉を取り除いていくと、その下に今年も見つけた。冬の厳しい張り詰めた空気の中で、ぴかぴかと光る生まれたての球根の芽。

 数年前に、ヒヤシンスとミニスイセンのテタテートを買ってから、時々水やりと鉢の植え替えをしてやるくらいなのに、毎年、健気にこの季節に芽を出してくれる。どうやって増えるのか分からないけど、気づいたら、1つ、そしてまた1つ、小さな球根が増えている。

 絹のようにすべすべになめらかで、濃い緑の小さな芽たちが、むくむくと一生懸命にお日さまに当たろうとして背伸びをしている。まだ花もつけていないのに、いい匂いがしそうで、思わず鼻から深く息を吸い込んでしまう。甘くひんやりと湿った土の匂いも嬉しい。柔らかい土から、小さくてまん丸な球根が、半分顔をのぞかせているのが、とてもかわいくて愛おしい。健気にお日さまに向かって生きようとするまん丸の命に、私が励まされる思いがする。

 冷たい北風の中でも、球根の芽を見つけると、途端に日ざしがほんのり明るく、柔らかくなったように感じる。季節はちゃんと廻っているんだなと、少しホッとする。いつもの公園の植え込みや街路樹の下も見てみよう。フリージアや水仙の芽が出ているかもしれない。もう少ししたら、京都のベランダにもスノーフレークの芽を見つけるだろう。

 懐かしい親戚の子どもに会うような気持ちで、今年も小さな命との再会を楽しみにする。そうしたひと時を今年も大切にしていけたらいいなと思っている。

(2026年1月)IMG_20260108_112914.jpg



 

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