エッセイ

おいしい楽しい焼きたてパン/安田裕子

近所に、評判のパン屋さんがある。その名も、石窯パン工房Capital(キャパトル)。フランス製やスペイン製の石窯の煙突がそびえ立つ工房では、石窯の遠赤外線効果により、パンがしっとり&ふわふわの口溶けに焼きあがるとのこと。その食感をうみだすのには、オリジナル配合のオールハンドメイドの生地も一翼を担っているようだ。そうしたしっとり&ふわふわのパンたちがこまめに焼き上げられ、「焼きたて、揚げたて、作りたて」のとっても魅力的な状態で店頭に並べられる。あのパンもこのパンもおいしそうだな~♪ どれにしようかなぁぁぁ~♪♪とワクワク目移りしているその目の前に、焼きあがったやわらかそうなホクホクのパンが次々に登場してきて、さらにこころが躍る。

菓子パン、惣菜パン、サンドウィッチ、食パン。幾種類ものパンたち。そのなかでも、私のお気に入りは、こだわりクリームパン。カスタードクリームがトローリとろけそうなぐらいにやわらかく、陳列台からピックアップしようとするも、せっかくのおいしそうなパンがこわれてしまいそうなぐらい。そのため、パン取り用のテコがそばに置かれていて、手持ちのパンバサミではなくテコでとりあげるようになっているのが、なんともさすがな感じ。また、彩り豊かに並べられている、焼きたて、揚げたて、作りたての数々のパンを店内で食べることができるというのも、石窯パン工房キャパトルの魅力のひとつである。比較的スペースがとられているイートインコーナーでは、おいしそうに楽しそうにパンを食べる人びとの笑顔が、あふれかえっている。休日のお昼どき、子ども連れで昼食を食べている家族の光景も、目に映る。主婦が、友達同士で楽しそうにおしゃべりしている光景も、目に留まる。さらなる嬉しいサービスは、イートイン用に、無料のコーヒーがセルフで提供されること。そのコーヒーがこれまた美味なのである。インスタントのコーヒーではなく、本格派コーヒーを提供してくれるそのおもてなしの心遣いが、これまた嬉しい。

このあいだ、関東から姪が数日間遊びに来た。なんと、はじめてのひとりお泊まり。食べることが大好きな姪っこと一緒に、石窯パン工房キャパトルに行く、という素敵なアイデアを思いつく。姪っ子は、最初、いそがしそうにしながら笑顔で働く白い調理服を来た店員さんや、あふれんばかりの数々のパン、そのパンたちをにっこり眺めて歩くお客さん、というように、人とものとがあふれる店内を、物珍しそうに、若干圧倒されるような様子で眺めていたが、3匹の子ブタパンを見つけるや、これがいい!と反応する。子ブタの顔が縦に3つつながったパンのなかには、カスタードクリーム、チョコクリーム、いちごクリームがそれぞれにつまっている。ひとつずつちぎっては、違う色のクリームがはいっていることに、ワ~すごい~!とテンションがあがる私と姪っ子。おいしさはもちろん子ども心をくすぐるそんな小技に、これまた感嘆。

小さい頃、母親が家でパンづくりをする際に、そのパン生地を少しもらって、コネコネと楽しみながら、動物の顔のかたちをしたパンをよくつくったものである。そのことが、私にとってとても豊かで楽しい記憶のひとつとなっており、姪が遊びに来たら一緒にパンを作ろう!と、ずっと以前から心密か?に思い描いている。3歳の姪には、パン作りはまだちょっと難しそうだなという印象であるけれども、3匹の子ブタのパンをおいしそうに楽しそうに嬉しそうに食べるその様子を見ながら、動物パン作りコラボが実現される日も近い!と、ほくそ笑んでいる私である。

(2014年6月)

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