エッセイ

ドラマのようなある日の出来事/森﨑和代

昨年度ご依頼くださった保育所の所長先生が、今年度異動先の保育所で再度ご依頼をくださって、再会をうれしく思いながら講演先に向かうべく最寄駅に着くと・・・

土曜日だというのに通学の時間帯でもあり、また休日を楽しむたちなどもいて、駅前はたくさんの人であふれかえっていた。ふと見ると、車椅子の男性が目に入った。きょろきょろされていたので、「何かお困りですか。お手伝いしましょうか」と声をかけると、踏切を渡りたいとのことだった。時間もあったのでお手伝いしたが、初めて車いすを押してみて、線路は軽く坂になっていることを知った。線路を渡るには、男性といえども結構力がいるな、大変だなと思いながら踏切を渡りきった。「ありがとうございました」「お気をつけて」。この後も大丈夫かなと、気になりながらも反対方向だったので、少し言葉を交わして分かれた。

最寄駅から電車に揺られ、今度はJRに乗り換え大阪に向かう。

さすが土曜日、ここでもホームは人でごった返していた。電車に乗り込み奥に進むと、2歳くらいの子どもを連れたママふたりが座っておしゃべり。子どもたちはママにしっかり抱かれてウトウト・・・。微笑ましい光景。駅に着き、沢山の人にもまれながら小さな子どもを抱き、電車を降りようとする姿に目に留まったのは、子連れならではの大荷物。思わず、「お母さん大変~えらいね~。でも、ママにしっかり抱っこされて子どもさんは幸せそう」。「ありがとうございます」「気をつけてね」ここでもまた少し言葉を交わし、分かれた。なんだかほんわか~♪

さらに電車を乗り継ぎS市に到着。

この日は土曜日の子育て子講演だったが、あっという間の1時間だった。講演終了後、質問にたくさんのお母さんたちが来られた。中に、授乳をしながら待っていてくださった方がいて、いろいろお話をお聞きするうち、しゃっくりを始めた赤ちゃん。その弟をみてお兄ちゃん(7歳)が、「げっぷさせたん?」「あ、まだやわ」とお母さん。すると、お兄ちゃんは、そのちいさな身体にしっかり赤ちゃんを譲り受け、背中をやさしくとんとんとし始めた。あら~♪またまたほんわか~♪

帰路、温かい気持ちで電車を乗り継ぎ、乗継時間を利用してスーパーに立ち寄った。

買いものをしてレジを終え、持ち帰る準備をしていると・・・。「もう、あんたのやることは遅いから」と言いながら食品を袋の中へ入れる夫。妻は傍らで、ただにこにこして。なんだかその光景が微笑ましくて、わたしも笑顔に。女同士二人、ふと目が合い思わず微笑み合う。その雰囲気に夫も気づかれたので、思わず「いいですね~」とわたし。三人で微笑みを交わす。「お先に」と会釈され、お二人はなんとも穏やかな笑顔で去っていかれた。見るともなく目で追っていたら、後を歩かれていた妻はその足で2階に・・・。エスカレーターに乗りながら先に行った夫に声をかける。あわてて追い戻る夫。そして、エスカレーターを上がり、妻がよろけて落ちないようにとやさしく背中に軽く手を当てられて・・・。またまたほんわか~♪

こんな日もあるんだな~♪と幸せな気分で電車に乗り込むと・・・。

え!?車内の通路に男性が倒れている!びっくりしてわたしが声をかけようとすると、近くに座っている女性が「大丈夫、大丈夫」と言うようにわたしに手で合図しながらも、見守っていらっしゃる様子。『お知り合いなのか』と思いつつも、倒れていらっしゃる男性の苦しそうな形相が気になる。「大丈夫なんですか?」とその女性に声をかけると、どうも知り合いではないらしい。先ほどその女性が倒れている男性に声をかけると、「酔っぱらって寝ているだけ」とこたえられたとのこと。しかし・・・と思っていると、私の気配に気づかれたのか「そろそろ駅員さんが来られるんじゃないかな」と女性。すると、その通り!サラリーマン風の男性が駅の人を連れてこられて・・・。駅員さんに起こされ、椅子に座られ、その後携帯で電話されて2~3駅後にふら~ふら~と降りて行かれた。あ~よかった~。見知らぬ人同士の連携プレー!いいね!

そして、何とも幸せな気分で帰宅し、夕刊を取ろうとポストを見ると・・・

袋に入った湿布薬が。先日、リンパマッサージをしてくれた友人が、“腰が疲れてたよ、これよく効くから”と、わざわざ家まできて湿布薬をポストに入れておいてくれたのだ!なんて親切~♪うれしい~♪

これは本当にあった、なんとも朝からほっこりした一日の出来事。こんないろいろなことが一日の中で起こるなんて。ドラマのようでしょ!

(2014年10月)

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