エッセイ

目下奮闘中②-仕事復帰に向けて/渡邉佳代

早くも出産してから3ヶ月が経った。この間、年末年始を挟み、里帰りしていた実家から関西に戻って、仕事も週2~3であるが復帰し始めた。前回のエッセイ「おっぱいを飲まない!」騒動からも、ずっと立って抱っこしていないと寝ない時期、仕事復帰に向けての託児所探しの時期…と、その都度、頭を悩ませてきた。

今も、「もう少し子どもと一緒にいたいな」という思いと、1日中家にこもって煮詰まると、「いやいや自分も働いたほうが、子どもとより良く関われる」という思い、子どもを抱っこしていても「あの仕事の締め切り、近いのにな」と焦る思いと、子どもがうまくおっぱいを飲めなかったり、泣いてばかりいると、「私の心ここにあらず…が伝わってしまうのかな」と自分を責めてしまう思い…など、子育てと仕事のどちらもが中途半端に宙ぶらりんになり、どちらをしていても後ろ髪を引かれる思いを感じることがある。

宙ぶらりんのままだから、人が活き活きと子育てを楽しんでいる話を聞いたり、仕事に思いっきり打ちこんでいる姿を見ると、それを羨ましく思う自分にも気づき、一体、自分は何をしたいのか?と、うんざりすることもある。1日中、子どもを抱っこしているだけで終わり、何もできずに、あっという間に時が過ぎていく日も多く、焦りや歯がゆさを感じることも少なくない。

まだまだ自分が働きながら子育てをするということのバランスが図れずに、日々、奮闘している。だからこそ、「自分がどうしていきたいのか」という気持ちがじっくり湧いてくることを大切にしたいと思う。思えば、この1年、妊娠・出産に伴う体の不調や変化、夫婦別姓で出産すること、子どもの発達や託児所選び、仕事復帰の時期についてなどなど、自分の弱さや困りを抱えた時に、「自分は何を大切にしたいのか?」「自分はどうしたいのか?」を問い続けながら決断してきた。

夫婦別姓で子どもを出産することも、何故、それを選ぶのか、子どもに何を伝えたいのかを考え続けてきたし、生後2ヶ月半で仕事復帰したことも、仕事を週2~3にしたことも、タイムリミットが来れば決断してきたものの、今も葛藤を抱えながら試行錯誤している。

子どもが生まれたからと言って、~できなくなったと思いたくはない。できなかったことを子どものせいにしたり、果たせなかった自分の思いや夢を子どもに肩代わりしてもらうようなことはしたくない。子育てや仕事でうまくいかないことが生じた時に、どちらか一方のせいにしたくはないし、そのためにできるだけのことをしたいと思う。

子どものありのままを大切に思えるように、私が私であることを大切にしたい。そうした思いから、自分がどうしたいのか、自分の気持ちを問い続けてきたが、それが子どもの最善と一致しない場合もあるかもしれない。

今、ひとまず選んでいることも、どれもはっきり・すっきりとした答えが出ているわけではない。しかし、葛藤を抱えながらやっていくことが、人が生きていくということなのかもしれないと最近になって思う。存分に悩みながら、葛藤を抱えるキャパシティがほんのわずかでも、少しずつ大きくなっていったらいいと思う。

じっくりと自分の感情が湧いてくるまで待ち、どうしていきたいかを考えていくことは、せかせか動こうとしてきた自分にとっては、ある意味、修行に近い忍耐が必要だ。『女はみんな女神』(ボーレン著、新水社)の中に出てくるプシューケーの物語が興味深い。

プシューケーは、娘から妻、そして母になっていく女性の成長と、女性が自分で選択して主体的に生きていく道筋を表している。それは、女性が子育てと仕事(自分のしたいこと)を両立していく道筋をも表しているように思う。その成長の過程には4つの課題がある。

1つ目は「種のより分け」であり、自分の感情、価値観、動機をふるいにかけ、真に重要なものをより分けること。2つ目は「黄金の羊毛の獲得」であり、女性が心を豊かにしながら力や地位を得ていくこと。3つ目は「水晶のフラスコを満たすこと」であり、感情的な距離をとって全体像を捉えること。4つ目は「ノーと言うことの学習」であり、目標を設定して選択を行うことである。

これらの課題を通して、プシューケーは自分の勇気と決断力が試され、成長していくが、プシューケーが持つ最大の力は答えが出るまで待てる力と、誰かに助けてもらう力があることである。子育ては、特に、待つこと、助けてもらうことが重要な力になっていくように思う。

子どもは日に日にものすごいスピードで成長していく。だが、子どもの何十倍も生きてきた私は、これからじっくりゆっくり自分の気持ちを確かめながら、自分の変化も楽しめるようになれたらいい。子育てを楽しめる時もあれば、そうでない時もある。その両方を抱えながら、まずはボチボチやっていきたいと思う。

(2015年2月)

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