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母を「重い」と感じるとき/下地久美子

「母娘関係」というのは、女性にとって、永遠のテーマといえるほど大きなものです。フェリアンのカウンセリングでも、対人関係や生き方の悩みの根本に母親との関係が影響している方に出会うことがよくあります。

「母の夢を実現するための道具にされた」「母に認められたくて、いい子を演じてきた」「ずっと母の愚痴の聞き役だった」「母に関心を持ってもらえなかった」など、多くは、母親から強いコントロールを受けてきたために、自分らしく生きられないつらさを語られます。そして、その苦悩は、若い世代だけでなく、中高年になっても続くこともあります。

表面的には仲の良い母娘であっても、無意識のうちに、母親の顔色を窺ってしまったり、母親を傷つけることを恐れて我慢してしまうということがあるかもしれません。

母親は娘が生まれたときに、同性であることで、娘を自分の分身のように感じてしまいがちです。叶えられなかった夢を娘に託して、もう一度娘として生き直したいという願望をもつこともあるでしょう。また、同じ女性だから、気持ちが通じる、わかってもらえるという過剰な期待を抱いてしまうこともあります。

幼い娘たちは、愛されたい一心で、母親の願いに応えようとします。ほとんどの娘たちは、思春期に反発して、母親から独立した自分自身を築いていきますが、それができずに、親の期待に応え続けると、あとになって母親の代理人生を歩まされてきたと苦しむことも少なくありません。そして、母親の存在が重たいと感じるのは、ひどい娘なのだろうかと罪悪感を覚え、母親から独立した「個」を確立するのに大変なエネルギーを要します。

娘が母親から離れようとすると、母からすれば、「娘のためにこんなに一生懸命やってきたのに裏切られた」と、娘に対する怒りが湧き、母娘関係がこじれてしまうことにつながるのです。そうならないためには、母と娘であっても別個の人格であり、それぞれの人生を生きなければならないということを理解しておく必要があるでしょう。
(2014年7月)

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