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自分も相手も大事にするコミュニケーションー現代人のコミュニケーションを見直す/小田裕子

現代はコミュニケーションツールの進化により、いつでも、どこでも、誰とでも気軽にコミュニケーションがとれる一方、生身の人間同士のコミュニケーションは乏しく、難しくなっているように思います。現在は、必要なものを手に入れるにも、人間関係においても様々な選択肢が用意されているため、間接的かつ一回(単発)のコミュニケーションで事足りる、便利で気軽な手段を利用するようになるのは当然の事かもしれません。

そうした社会環境の中では、分かりあえるまで、納得するまで繰り返しコミュニケーションをとることは「迷惑」「面倒」と捉えがちで、表面的なコミュニケーションに終始する傾向 にあります。そのため、やる気や信頼、愛情といった相互作用の中で時間をかけて育まれる内発的な感情が育ちにくくなっているのではないでしょうか。

コミュニケーションの問題は、「新時代の若者」や「個人の性格」、近年では安直に「発達特性」のせいと捉えられがちですが、コミュニケーションは「私とあなた」の「自己表現と受け止め方」によって成り立ちます。基本的人権を侵さない限りは、特定の誰かのせいではなく、どちらか一方のせいでもなく、私とあなたの関係性の中で生じてくる問題です。また、コミュニケーションのあり方は環境によって形作られていくため、現代社会を生きる中で、気付かないうちに身に付けてきた、現代人特有の価値観やコミュニケーションのあり方を見直していくことが、現在生じているコミュニケーションの問題を改善していく鍵となります。 自分の心の声に耳を傾けて、自分の想いや意見を表現することは、人としての権利ですが、私たちはこの権利をうまく使えているでしょうか?

他者の期待に応じてばかりで、自分の心の声に鈍感になってしまったり、自分の想いを表現するのは「自分勝手だ」「迷惑をかける」と思い込んで抑えたり、自分の権利を主張することで他者の権利を侵害していることに無頓着だったり・・・人との間で自己理解と自己表現をすること自体が難しくなっているように思います。

目の前の人としっかり向き合う機会が失われつつある今日において、人と人とのコミュニケーションは育ちの中で自然と身につき、磨かれていくものではなく、意識的に学び、使っていかなければ錆びついてしまうものなのかもしれません。 今回は、人と共に生きていくために必要な自己理解と人間関係の基礎となる「自分と相手を大事にするコミュニケーション」の要点を紹介したいと思います。

はじめに、お互いを大事にしながらも、率直に、素直に自分の意志を相手に伝えることは、人としての権利であるということを知ってほしいと思います。そして、その権利を自由に使えるようになるために、以下のことを心がけてみてください。

自分も相手も大事にするコミュニケーションのポイント

1.まず「自分はどうしたいのか?」を考える。

2.相手の立場を考えてみる。(相手の気持ちや考えを聴く、一旦受け止める。それから、どういう風に自分の気持ちや意見を伝えたら相手が受け取れるか考える)

3.自分の気持ちや意見を整理して伝える。 具体的な考え方とスキルとは・・・ *体と心の力みをとる(心身一如と言われます。まずは体の力を抜いてリラックスする) *非言語に気を付ける(表情、姿勢、視線、声のトーンやテンポに気を付ける)。

*「私」メッセージで伝える。 あなたがではなく、私はどう思うか、どうしたいかを伝える。「あなたが遅かったから遅刻したじゃない!」☞「(私は)時間になったら先にいくね。」

*断る時は①気持ちを表す②理由で断る③別の提案をする。 何に対しての「ノー」なのか明確に その場ですぐに答えをださなくてもいい(少し考えて後ほどお返事します) クッション言葉の活用(せっかくですが、残念ながら、あいにく...)

*指示や指導は的を絞って具体的に(全否定ではなく部分否定、出来ているところも伝える)。

*誘ったり頼んだりする時は、提案として相手の選択権への配慮をする。

*自分の問題と相手の問題の線引きをする。 コミュニケーションは発信と受信によって成り立つ。「いかに発信するか」までが自分のできることであり、「どう受け止めどう反応するか」は相手の問題です。自分の表現を変えることはできても、相手の受け止めや反応を変えることはできません。但し、繰り返しコミュニケーションをつづけることで、お互いへの理解や関係性を変えていくことは可能です。

コミュニケーションの入り口は自己理解です。自分が何を想い、どうしたいのか、自分の心の声に耳を傾けることから始まります。他者の期待に応え続けてきたり、家族の中で世話役を引き受けてきたり、長年にわたって自分の気持ちや意見に耳を傾けてもらえずに生きてくると、自分の心の声が聞こえなくなってしまいます。そのような場合には、個別にじっくりと自分の心の声に耳を傾けてもらう機会が必要になってきます。

フェリアンカウンセリングでは、あなたの心の声に耳を傾けて、どんな声も大事に受け止めます。そしてあなたらしく自己表現ができるようお手伝いします。そして、分かり合えるよう繰り返しコミュニケーションをとる相互作用の体験を通して、自他への信頼感や主体性を育みます。

また、フェリアンスタッフがあなたの職場や研修会にお伺いし、職場やグループ内の困りに応じた内容で、自己表現と受け止め方、職場の人間関係の向上のお手伝いをいたします。

人間関係は一日にして成らず。「お互いを大事にするコミュニケーションをしたけれど、キレられた...」という事もあるでしょう。

自己表現しない権利、断る権利、怒る権利はあなたにもあるし相手にもある。

いろんな気持ちや反応があり、コミュニケーションは一筋縄ではいきません。失敗したり試行錯誤を繰り返す中で、自己表現や他者の受け止めが上手になり、自分も相手も生きやすい人間関係が出来上がっていきます。

修復不可能なほどに自分や相手を傷つけない限りは、お互い自分らしく生きることが許される包容力ある人間関係を目指していきたいものです。

参考文献 平木典子著(2007)『アサーショントレーニングーさわやかな<自己表現>のために』金 子書房 森田汐生(2012)「アサーティブな話し方・伝え方~自分も相手も大切にできる会話術 ~」現代けんこう出版

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