カウンセリング

ストーカー被害にあった方へのカウンセリング

2021年に「ストーカー規制法」が改正され、従来のつきまといや待ち伏せ、交際などの要求、乱暴な言動、無言電話、しつこくメールやSNSメッセージを送る、汚物などの送付、名誉を傷つける行為、性的羞恥心の侵害に加え、GPS機器等を用いた位置情報の無承諾所得や実際にいる場所付近で見張ること、拒まれたにも関わらず何度も手紙などの文書を送るのもストーカー行為とされ、規制対象行為が拡大されました。

しかしながらストーカーによる加害は後を絶ちません。ストーカー被害に遭うと、「また待ち伏せされるのではないか」「電話がかかってくるかもしれない」「ひどいことをされるのでは」という不安にさいなまれ、安心して日常生活を送ることが難しくなりがちです。常に周囲に注意を払わなければならない緊張状態が続き、悪夢を見たり夜眠れなくなったりすることもあるでしょう。

ストーキングとDVとの関係

人間関係というものは、双方が望まなければ本来交流は生まれず続くことはありません。一方が密接な関係を望んでも、他方がそれを望まなければ、互いの関係は縮まらないものです。そういう現実に直面したときに、関係を他者の意向を汲んで調整することができず、一方的にコントロールしようとするのが、DVでありストーキングです。自分の中に湧きあがる悔しい、悲しい、淋しい、腹立たしいといった感情を抑えられず、自己の欲求を遂げようという支配欲や相手の生活を破壊しようという復讐欲が負の執着となって向けられるのです。

DVは被害者が逃げようとするときに最も危険が高まり、ストーキングは被害者を強引に支配下に引き戻そうとするときに用いられることが多いです。このようにDVに派生するストーキングを「DV型ストーキング」といいます。「DV型ストーキング」では、加害者は、被害者から別れることを許しません。自らの加害を否定し、その責任を被害者や周囲のせいにします。周囲の介入を嫌がり、被害者を孤立させます。その激しい支配欲は特定の親しい人にのみ向けられ、外と内を使い分けます。そして、加害は何度も反復され、エスカレートしていくのです。

ストーキングに対処するためのポイント

 あなたが相手の接近を「怖い」と感じ、私的領域に踏み込まれることに不安を感じているなら、ストーキングを受けている可能性があります。理不尽な付きまとい、嫌がらせは犯罪で、あなたは悪くありません。

ストーキングの被害を受けたときに大切なポイントは4つあります。

① 早い時期にはっきりと拒絶すること。
② ストーカーの接近や干渉に応じないこと。
③ 孤立せず周りに相談すること。
④ 安全を最優先すること。 

ストーカーは執拗に関わりを持とうとするので、それを早い段階で食い止める必要があります。ストーカーには、「今後私の生活への接近や干渉を一切断る」とはっきり伝えましょう。その際、断る理由を説明する必要はありませんし、相手からの接近や干渉に応じる必要もありません。また不特定多数の人が知り得るSNSなどに情報を書き込まず、相手に情報が渡らないようにしましょう。あなたからの拒絶したことや相手の反応の記録は、すべて保存し証拠として残しておくとよいでしょう。

周囲の人に相談し、助ける側についてもらいましょう。あなたが孤立し、無力だと感じていれば、ストーカーからの接触が続いてしまうかもしれません。そうならないようにすることが何より大切です。

もちろん安全が最優先です。迫る危険から逃れるためには、一時避難するという方法があります。危険を察知したら、確実に避難したり通報したりできるように、できるだけ早い時期に警察や配偶者暴力相談支援センターなどに相談し事情を知らせておきましょう。

被害者が使える法的社会的支援

 あなたの安全を確保するために、様々な手続きや制度を活用しましょう。

① 110番緊急通報登録制度
 警視庁と道府県警察では、DVやストーキングを対象に「110番緊急登録制度」を置いています。登録番号から緊急通報があったときに、警察が通報者の位置を割り出し急行するなど、迅速な対応が可能となります。

②一時避難
 DV防止法やストーカー行為規制法に基づき、危険性・切迫性の高い事案については一時保護を受けることができます。

③ストーカー行為規制法上の相談・警告・禁止命令など
 各地の警察署には「DV/ストーカー対策室」などストーキングの担当部署が設置されています。ストーキングを受けたら早めに相談に行きましょう。 警察は、被害者のために、ストーカーへの指導・警告・禁止命令、被害者や関係者の周辺パトロール、一時避難先への搬送、携帯型緊急通報装置や防犯カメラの貸し出しなども行っています。

⑤ 刑事犯罪の被害届・告訴
捜査につなげるために、被害届を出したり、告訴したりすることもできます。

ストーカー被害に遭うと「PTSD」を発症しやすくなります

ストーカー被害の渦中にあるときは、その状況から逃れるのに必死で、自分のことをふりかえる余裕もないことが多いですが、問題はストーカー被害から解放された後も、怖い場面がフラッシュバックしたり、同じような状況に置かれるとパニックを起こしたりしてしまうことが稀ではないということです。

□突然、つらい記憶がよみがえってくる。
□ふとした時につらい体験をした時の感情が湧いてくる。
□その体験を今しているように生々しく思い出す。
□同じ悪夢を繰り返し見る。
□ぐっすり眠れない。
□急に取り乱したり、涙ぐんだり、怒ったりする。
□常にイライラして、ささいなことに驚く。
□いつも神経が張りつめリラックスできない。
□記憶を思い出す状況や場面を避ける。
□感覚が麻痺し、喜怒哀楽を感じにくくなる。

これらは、非常に怖い経験をした直後であれば、ほとんどの方に見られる症状ですが、数カ月たっても同じような症状が続いたり、悪化する場合にはカウンセリングを受けることをお勧めします。

 ストーカー被害によるトラウマに対しては、トラウマからの回復に向けたカウンセリングが役に立ちます。ストーカー被害から立ち直るのは、たやすいことではないかもしれません。しかし、心の傷が癒えるにつれ、少しずつ安心感を取り戻し、人とつながる喜びを感じたり、ささやかな日常に幸せを覚えるようになっていくでしょう。

 フェリアン大阪・京都のカウンセラーは、あなたの回復へのステップに寄り添い、サポートいたします。

参考文献
長谷川京子・山脇絵里子(2017) 『改訂ストーカー-被害に悩むあなたにできること』 日本加除出版株式会社

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