エッセイ
自分との約束/窪田容子
フェリアン設立の時、自分で決めたことがあった。向こう3年間は、他のことをあきらめてもいいから、組織を軌道に乗せるために精一杯努力しようと。とはいえ、この3年間も学びたい研修にはほとんど参加してきた。カウンセリングの方法も広がり、相談に来られた方の悩みとニーズに合った方法の選択肢が増えた。スタッフそれぞれも、仕事の幅を広げ、質を高め、お陰さまで仕事が増えていった。そして、新しいスタッフが2人仲間に加わってくれた。
まだ全てが整ったわけではない。できていないことや、もう少し整えたいことがまだある。でも考えてみれば、これで完成という到着点はないのかもしれないと思う。うまく表現できないが、組織が生きて動いていることをつくづく実感したし、生きて動き続ける組織であることが必要であるとも感じている。
お正月に友人達と、今年のキーワードは?という話をした。「おのずから」「じっくり」「ありのまま」「なんくるないさー」「動じない」「しなやか」「期待しない」「受け入れる」「メリハリ」「断捨離」「たおやか」「楽しむ」・・・。皆のいろんなキーワードが出た。皆のキーワードを素敵だなぁと思いながら、私が今年のキーワードとして選んだのは、「わくわく」と「味わう」。
「わくわく」というのは、もうずっと私の中で、仕事でもプライベートでも何かをするときのモチベーションである。知らないことを知ること、新しいことを学ぶこと、行ったことがないところに出かけること、したことがないことをやってみること、新しいことにチャレンジすることは、いつもわくわくする。選択に迷ったら、心がわくわくする方を選ぶ。フェリアンという新しい組織を立ち上げるのも軌道に乗せるのも、本当に大変だったけれど、わくわくするプロセスでもあった。
そして、もう一つのキーワードである「味わう」。食べ物を味わうという意味ではない。
人生の時間が、あまりにも速く進みすぎるように感じるから、人生を、日常を、一つ一つのことを、もっと味わって過ごしたいと思っている。楽しいことも嬉しいことも、何気ない日常も。「じゃぁ、苦みはどうなの?」と友達に問われた。悩ましい・・・。ゆっくりと味わった方がいい時と、味わわずちょっとどこかに置いておきたい時とがあるのだと思う。
さて、自分とのこの3年の約束は、おおかた果たせたような気がしている。今年は、「わくわく」しながらも、「味わう」を意識して日常を過ごしてみたい。あちこちに植えこんでいたチューリップが可愛い花を咲かせた。フェリアン大阪近くの大川沿いの桜も満開である。ずっと行きたかった吉野の桜も見に行った。まずは、春爛漫なこの季節を味わって過ごしたい。
(2017年4月)