エッセイ

不思議な体験/下地久美子

これまでも学んできたが、改めてしっかり勉強しようと思い、年末に「解決志向アプローチ」の研修を受けた。「解決志向アプローチ」というのは、従来の心理療法とは違い、問題やその原因、改善すべき点を探すのではなく、解決に役立つ「リソース=(資源、能力、可能性等)」に焦点を当て、それを有効に活用するカウンセリングの方法で、他の心理療法に比べて短期間で問題が解決することで注目されている。

「解決志向アプローチ」では、独特の質問を使うことも特徴で、例えば、有名なミラクルクエスチョンでは、クライエントに「今晩あなたが寝ている間に奇跡が起こったと想像してください。奇跡とは、今日あなたがここへ相談に来られた問題が解決するというものです。ただ、あなたは眠っていたので、問題が解決していることは知りません。次の朝、奇跡が起こったとわかるどのような変化に気づくでしょうか?」と、これまでとの違いを詳細に聞いていく。他にも、「一番いい時の状態を10で、一番悪い時の状態を1とした時に今いくつですか?」と聞くスケーリングクエスチョンなど、様々な質問技法がある。

それらの技法を用いて、「わが校のために貴重なご意見を教えていただいてありがとうございます」繰り返したら、毎日学校にクレームの電話をかけてきた人からの電話がぴたりと止んだというエピソードをはじめ、仕事に遅刻ばかりしていた人が、「解決志向アプローチ」を受けた後、一度も遅刻がなくなったという話や、長年どうしてもお酒をやめれなかった人が、きっぱりお酒を飲まなくなったなど。にわかに信じがたいような例が講師から挙げられ、私は、「ほんとかな?ちょっと話、盛ってるんじゃないの?」と半信半疑であった。

このような研修では、受講者同士がペアを組んで、クライエント役とセラピスト役を交互にすることが多い。私が困っている問題として、「掃除が好きじゃなく、いつも部屋が散らかっていて、物に埃がたまっている。掃除を邪魔くさいと思わず、自然と掃除ができて、いつも部屋が片付いている状態になりたい」と言った。この悩みは、結構切実な悩みで、毎日家に帰って部屋が散らかっていることにうんざりしていた。

実習では、セラピスト役が、「問題が解決すると、今と何が違いますか?」「どうなっていると思いますか?」「あなたはどんな気分になっているでしょう?」と、どんどん質問していってくれる。私は、「部屋が片付いていると、気持ちいいですね。やる気が出てきて、すごく幸せな気分になると思います」など答えていき、だんだん自分の中で家がきれいに片付いているイメージが出来上がっていった。

そして、今、その研修から1カ月以上たったが、年末に大掃除した状態が、ずっと保たれている。無理なく自然に掃除ができ、テーブルの上も、飾り棚の上も、物がない状態だ。

なぜ、それができているのだろう? ひとつ気をつけているとすれば、ちょっと汚れたなと思ったら、すぐに汚れをふき取り、「あとでやろう」と後回しにしてそのまま放置するということがなくなった。そうすると、汚れている個所が少ないので、すぐに元の状態にできるように思う。

それと、これまで「自分は掃除が好きではない」と思い込んでいたのが、やったら意外とできるんだと思えるようになったのが今までとの違いかもしれない。

まさか、こんな奇跡が自分の身に起こるとは思わなかった。受講料以上のお得がついてきた。

ただし、この解決志向アプローチが効果を発揮するのは、自分自身の問題であることが重要である。例えば「何も言わなくても子どもが勉強するようになる」とか、「夫が家事を進んでやってくれるようになる」などの課題は、相手が変わらないといけないので、難しいようだ。

この「解決志向アプローチ」に興味を持たれた方は、大阪と京都のフェリアンのカウンセラーにお尋ねくださいね。

(2017年2月)

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