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レジリエンスの視点を持つ/小田裕子

「レジリエンスって知っていますか?」と講演で尋ねると、近年パラパラと手が上がるようになってきた。私がレジリエンスに着目した支援を始めたのは、2006年(女性ライフサイクル研究16号の生き抜く力を育む)のことだ。逆境下を生きている(きた)人ほど、レジリエンスを持っており、自分では気づいていないが、あらゆる知恵や工夫を凝らしながら、逆境を生き延びてきたという事実に着目する視点が、虐待やDV環境を生きている人達と向き合っていく中での、希望となり、合点がいく感じがして気に入っている。最近は、トラウマとなるほどの逆境に限定されず、すべての人に通じる考え方として、教育やその他の分野でも注目されている。

レジリエンスは、深刻な社会問題や健康問題などによるリスクやストレス研究の中で、逆境においても損傷を受けず、良好な発達がみられる要因として発見された。「復元力、回復力、逆境を跳ね返す力」などに訳され「逆境にあっても、損傷を受けずにいるその人の基本的な強さ」、また「逆境を跳ね返すべく引き出された力」と定義される。

つまり、レジリエンスとはすべての人に備わっている生きていくための本能的な力である。また、レジリエンスは個人の持っている力だけではなく、家庭環境(家族・親族の支え)や地域環境要因(学校、近隣、地域性)によって引き出されたり、育まれたりする「個性と環境の相互作用性による独自性の高い力」でもある。

レジリエンスを育むには、子どもを取りまく大人側が、子どもの持っている力や個性を尊重し、それを中心に据えた関わりができるかどうかにかかっているように思う。教育や治療として、外から教えたり、与えたり、引っ張り上げたり、または管理したり、コントロールする関わりではなく、安心できる大人との等身大での日々の関わり(会話、学び、遊び、興味の共有、居場所…)の中で、千差万別の独自性が育まれることが大切だと私は考えている。私自身、専門家としての介入は最小限にとどめ、本人のもっている独自の力に着目し、本人とその力やしんどさを共有していくことで、自分らしさに気付き、自分への信頼感(基本的自尊心)を回復していくような関わりを心がけている。もちろん、フェリアンでのカウンセリングでも。

レジリエンスは見出していくほどに興味深く、つかみどころのない、不思議な力である。

そのこと自体がどんなことがあっても生き延びていく人間の可能性や希望を表している様で私は好きだ。

「NHKエデュカチオ!」にて、レジリエンスの紹介をしています。10月4日「親子で育む折れない心」再放送予定。よかったらご覧ください。

(2014年9月)

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