エッセイ

年報「女性ライフサイクル研究」に向けて/桑田道子

フェリアンスタッフとFLCスタッフ合同での1泊研修を京都の北白川で行った。

ご存知の方も多いが、女性ライフサイクル研究所はこの4月に組織改編を行い、従来からの天神橋筋5丁目のFLCと、同心(と京都は烏丸御池)のフェリアンとの二手にわかれ、運営している。日頃はそれぞれのカウンセリング、講師にあたっているが、年に1度発刊している年報『女性ライフサイクル研究』は共同で出版する。

これまでも、年報発刊のためには月1度の年報会議に加え、1泊研修を行い、各年に設定するテーマについてみっちりディスカッションしてきた。これに倣い、今年度も毎月共同で年報会議を開いているが、さらなる熟考を求め、1泊研修を設定した。

出町柳まで宿の方にお迎えに来てもらい、送り火で有名な大文字山を右に見ながら比叡山へ続く道の途中にあるラジウム温泉に到着。大阪市内からたった1時間少々で、すっかり景色は緑が色濃く、ひんやりとした空気に変わる。

温泉宿は国道沿いに建つが、道沿いに建物があるのではなく、結構な水量の小さな川と、夏みかんのような大きな実がたわわになる木を挟んでエントランスがあるので、ワクワク感が増す。客室は露天風呂に大画面テレビ、ソファーと近代的で快適なつくりになっているが、温泉や水飲み場(湧水がひかれている)、大広間は湯治場のような昭和を感じる、ほのぐらい居心地よさである。「日本有数のラジウム含有量の天然温泉」との説明書きに、子どもの頃に読んだ『キュリー夫人』の伝記以来の「139.35ナノキューリー」との文字を見つける。

仕事後にそれぞれ集合するため、私とSさんNさんは夕食直前に到着。お抹茶で出迎えてもらうも、バタバタと夕食になだれこむ。色とりどりの八寸にはじまり、京野菜がふんだんに使われ、新鮮なお刺身に朴葉焼きのお肉、松茸ごはんに揚げたての天ぷら、何種もの手づくりアイス…と大満足で、このまま寝たい~となるところを、ピシッと気持ちをいれかえ年報会議へ。

今号(24号)のテーマは、「抵抗とレジリエンス」。これまでの会議で、執筆者はそれぞれこのテーマに沿って、何に焦点をあてるかを決め、構想、初稿、二稿とあげてきた。執筆中には、深く向き合うからこその混乱が生じたり、疑問もわいてくるので、あらためて本稿における「抵抗とレジリエンス」の定義を共有し、コンセンサスをとる。レジリエンスは「女性ライフサイクル研究16号」でも取り上げているテーマであり、「逆境から立ち直り、成長していく力、生き抜く力」との定義を紹介している。もちろん広義において今号でも変わりないが、より「抵抗(レジスタンス)」という自身の志向、行動と、レジリエンスとの関係に注目し、それらを教育や市民活動の視点から考察してみる。

とご紹介しつつも、今号では私は論文ではなくコラムを担当するので、例年のようにどっぷりテーマに浸るというのとはすこし違う対峙の仕方をしているなと感じている。けれども、これまでこの年報を書くことで学んできた、マクロな視点で事象を捉えつつ、ミクロな視点、自分自身の足元から離れてしまわないようこころがけることを大切に、この「抵抗とレジリエンス」に向き合いたいと思う。また、女性ライフサイクル研究所では<よく学び、よく働き、よく遊び>をしっかり教わってきたが、この1泊研修も「自分たちをケアしながら、年報へ力を注いでいく」大事な1コマである。社会から良いものを得て、良いものを社会へと還元していくことができるように、心して取り組みたい。

23年間と長く読者でいてくださっている方々や、毎年感想を送ってくださる方々に励まされ、今年も年報『女性ライフサイクル研究』を発刊いたします。出来上がりをどうぞ皆様も楽しみになさっていてください。(2014年9月)

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