エッセイ

あま~いケーキの誘惑/下地久美子

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私の場合、手っ取り早く幸せになる方法は、美味しいケーキを食べることです。フェリアンの講座でも、「ストレス対処法」を尋ねると、必ず「美味しいお菓子を食べること」というのが上位にあがるので、「ストレス解消といえばケーキだよね」って方が結構いらっしゃるのではないでしょうか?

子どもの頃は、休日に家族で出かけた帰りは、「ヒロタのシュークリーム」か「不二家のアメリカンドーナツ」を買って帰るのが、お決まりでした。今、思えば、お手頃に買えるからだったんだろうなぁ~と思いますが、母に「どっちにする?」と聞かれて、いつも真剣に迷って、どちらかを選んでいたのを懐かしく思い出します。

時は流れ、「モロゾフ」のクリームチーズケーキを初めて食べたときには、「こんな美味しいものがあるんだ」と感動したのを憶えています。当時は、スフレタイプのチーズケーキはあったものの、ああいうコックリしたクリームタイプのチーズケーキは珍しく、それ以降は、ケーキと言えば、あの「チーズケーキ」が一番好きな時代が、長く続きました。

そして、1980年代に入って、アンリシャルパンティエが登場します。友だちの間で、「アンリのケーキ、もう食べた?」というのが合言葉になり、アンリのケーキを食べているということが一種のステータスのようになっていました。アンリシャルパンティエは、京阪神のケーキ業界にちょっとした革命を起こしたのではないでしょうか。これまでの街のケーキ屋さんにない、洗練された気品があって、おそらく、アンリ前、アンリ後で、ケーキというものの位置づけが、各段に上がったような気がします。

ケーキ業界のアンリ後の世界というのは、さらに上の美味しさを求めて熾烈な競争が繰り広げられています。ケーキ職人は、パティシエと呼ばれ、女の子たちの憧れの職業のNO.1になり、デパ地下のお菓子売り場は、宝石のようにキラキラしたケーキがずらりと並び、見ているだけでうっとりとし、用もないのにふらりと立ち寄ってしまうこともしばしばです。

そして、デパ地下の流行の波は激しく、数年前、生クリームたっぷりの「堂島ロール」を、整理券をもらって買っていたのが落ち着いたかと思うと、ガトーフェスタ・ハラダの「ラスク」に行列ができ、今は、グリコの「バトンドール」の時代に突入しています。

「バトンドール」に、なぜあれほど人が並ぶのか、不思議な気もしますが、きっと苦労した末に手にしたものって格別なのでしょうね。「バトンドール」は、少し前に友人からお裾分けしてもらったのを、知らない間に家族に食べられていて、どうして隠しておかなかったんだろうと悔しい思いをしました。

さて、梅田のデパ地下のお菓子売り場を隅から隅まで食べ歩いた結果、現在、私が、最も美味しいと思っているケーキ屋さんは、阪急百貨店にある「御影高杉」です。ここは、いちごのショートケーキが有名ですが、今の季節のお気に入りは、「モンブラン」。濃厚なマロンクリームと生クリームのハーモニーが、たまりません。

さらに、スイーツ好きな方に、とっておきの情報が、大阪市本町にある「セントレジスホテル」のデザート食べ放題。ホテルだけあって、お値段はやや高めですが、一皿一皿どれも芸術的に美しく、尚かつ味は、超絶品。あまりの美味しさに、なんだかウルウルしてしまうほどです。

食事のあとだったので、私は、4皿しか食べられませんでしたが、一緒に行った友だちは、5皿を完食していました。こんな優雅なホテルで、「大食い選手権」みたいになって、どうなん?!と、ちょっと気恥ずかしくもありましたが、ホテルのスタッフのみなさん、本当に感じが良くて、食べきれなかったチョコレートとクッキーを快くテイクアウトさせてもらって、大満足でした。

どこまでお菓子は進化していくのだろうと、美味しいものに目のない私は期待が膨らみます。反面、少々の美味しさでは満足できなくなって、さらに上を求める気持ちに恐ろしくなったりもします。

ともあれ、疲れたときや、気持ちが落ち込んでいるときには、美味し~いお菓子を食べて、リフレッシュできるのって、大人の特権ですよね~!

(2014年9月)

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