エッセイ

自分を信じて/おだゆうこ

「トントコトントコトントコ♪そーれー

うんどうかい!うんどうかい!みんなでがんばるぞ!やぁ!」

一歳7か月で入園した娘が最後の運動会を迎えた。年長さんは、オープニング“太鼓”に始まって、世界に一つの“縄跳び”、よーいどん“かけっこ”、天までとどけ“竹のぼり”、勇気を出して“跳び箱”、心を一つに“キッズソーラン”、“親子リレー”と最終学年の成長ぶりとかっこよさを充分に発揮するプログラムとなっている。年長さんだけがチャレンジすることができる、これらの内容は、運動会を目がけて短期的に取り組むのではなく、毎年の年長さんの姿にあこがれをもち、年長になったら、「跳び箱したい!リレーしたい!竹のぼりやってみたい!」という憧れの気持ちを長年かけて育み、日常生活の中、遊びの中で体の使い方や体の先端まで意識を向けること、あきらめずにチャレンジする心、もっと素敵にかっこよくなるように頑張る気持ちや、怖いことにも勇気を出して取り組むことや、皆で力を合わせることを経験し、結果として無理しすぎなくとも全員ができるようになっていくということに、毎年感心している。

私は跳び箱も、竹のぼりも、リレーも苦手で大嫌いだったけれど、それは、出来る―出来ない、うまい―下手という評価基準に縛られて、結局のところ一人ぼっちの体験となっていたからかもしれない。娘や保育園の子ども達をみていると、あこがれの対象があり、大好きな先生がいて、みんなで共通する目に見えない不思議な存在(年間を通してのシンボルとなる人間を超えた力)と出会い、仲間とつながり、先生を信じ、不思議な力を信じ、仲間を信じることが、自分を信じる力へつながり、それが「跳び箱とべた!」という結果につながるからこそ感動するのだ。自分の身体能力や技能を信じているのではなく、信じているのは自分をとりまく周りへの信頼であり、それが自分を信じる力を形成しているのだ。

運動会の数日前、娘が「跳び箱5段にチャレンジしたいけど、一度失敗して、怖くて勇気が出ない」という。お家で馬跳びの練習をしたときも失敗のイメージが出てきて、頭から落ち、くじけそうになった時もあった。そんな時、私は「もう今日はやめとこう」と言うのだけれど、「もう一回やりたい!頑張りたい!」とべそかきながらも言う娘の強さに驚き、その力はどこから来るのだろうと不思議に思った。

気分を切り替えるために、「いいこと思いついた!ママが明日の朝てのひらにおまじない書いてあげる!」というと、「ママ、○○○ならできる!」って書いてと力強く答えた。その言葉に『なるほど、跳び箱って自分を信じれるかどうかなんだ。そして、その強さは周りのサポートから生まれるのだなぁ』と気づかされた。おまじないを書いた日、娘は5段を飛んだ!

「子どもの力って本当にすごいなぁ」と思うけれど、子どものすごさは、取りまく環境の力を自分の力にする力にあり、つまりは、周りの大人たちがどれだけ、子どもの力を信じて、子どものために一生懸命になりきれるかにかかっているということではないか。自分を信じる力は、自分を取りまくサポートによって育まれるというわけだ。

それにしても、子ども達の真剣な顔や声や太鼓の音を聴いただけで、すぐに泣きそうになってしまうのは、年のせいだろうか・・・楽しくってワクワクドキドキしたり、緊張して真剣になって悔しくなったり、怒ったり、転んでうまくいかなくて、悲しくって涙したり、子どもたちのキラキラした表情や真っ直ぐなエネルギーは、何にも代えがたい。

今年も胸いっぱいの感動をありがとう。そして、子ども達を育んでくれた先生やお友達にも心から感謝したい。(2014年10月)

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