エッセイ
自分らしさを取り戻すために/窪田容子
「自分らしさを取り戻すために」というテーマで人と話し合う機会があった。
そもそも、自分らしさってどんなものだろう?
持って生まれた個性がある。そこに、環境(親の養育態度、家庭環境、幼稚園や学校など集団生活やその他の体験、学習したこと、文化、風潮など)が、加わって自分の考えや振る舞い方、性格が形成されていく。
環境が、自分らしさを育んでくれることもある。ありのままの自分が肯定されること、認められること、個性を大事にしてもらえること、そのままで愛されることなどは、自分らしさを育んでくれる。
一方で環境が、自分らしさを阻害し、抑圧していくこともある。虐待されること、怒られ否定され続けること、条件付きで愛されること、過剰に期待されることは、ありのままの自分ではダメだというメッセージとなる。いろいろな個性のある人々を、男と女という2つにバッサリと分け、男らしくあれ、女らしくあれとのメッセージを受けることも、その人らしさから離れていくことにつながりやすい。時間を効率的に使うことや、競争に勝つことに価値があると教えられること、いろいろな「~するべき」に縛られることなども、自分なりのペースで暮らすことを遠ざけていくことがある。
このハイスピード進む社会の中で、なんとか適応できる場所を見つけて生きている私たちは、多かれ少なかれ、無理をし、自分らしさを手放していっているのではないだろうか。それが、うつ病などの病も増やしているのではないだろうか。
では、自分らしさを取り戻すために・・・
話し合いでは、以下のような意見が出た。
人にどう思われるかを気にしない。
自分の凸凹をおもしろがり、愛おしむ。
ゆったりとした時間を作る。
今をよしとする。
期待に応えようとしない。
どんなときも大丈夫と思う。
こうありたいを手放す。
至らなかった自分を許す。
どんなことにも意味があると思う。
判断や評価をしないでいる。
高望みしない。
自分のいいところを見つける。
安心できる人と話す。
好きな場所に行く。
「ま、いいか、しゃあない、しゃあない」と思う。
体を動かす。
どんな感情も、あっていいと受け止める。
「~するべき」を手放す。
自分の内なる声に耳を傾ける。
何かをしたときに、自分の体が喜んでいるのかどうかに目を向ける。
自分にわいてくる欲求を大事にする。
自然の豊かなところで、ぼーっとする。
もちろん、人によって自分らしさを取り戻すために大切なことは違うだろう。何が役に立つのか、まずは自分に聞いてみることから始めることが必要なのかもしれない。
この社会に適応するために、無理してがんばることもあるし、自分を抑え協調することに比重を置かざるを得ないことももちろんある。またそれが、悪いというばかりではない。そうやってがんばっているうちに、自分らしさの新たな一面が開拓されることもあるだろう。ただ、そればかりになると、自分自身が分からなくなったり、エネルギーがダウンして意欲が出なくなったりすることもある。
先ごろ、「だんだん、また自分らしさに戻っていくような気がするね・・」と、同年代の友達と話すことがあった。ユングは、中年期を人生の正午と表現し、人生の午後は、自分の本来の姿を見出し実現していくことが重要な課題となるとした。中年期真っ只中の私。時々立ち止まり、自分らしさに目を向け、耳を傾けながら、過ごしていきたいと思う。
(2015年1月)