エッセイ
ふらりと立ち寄るのは、どこ?/津村 薫
実は同じテーマのエッセイを5年前に書いたことがあった。ちょっと気に入ったエッセイでもあったので、それをご紹介しながら、現在についても少し書いてみようと思う。
「暇なんかあるんですか?」と聞かれたことも何度かあるくらい、仕事三昧の毎日を送っているのは確かだけれど、少し時間が空くことも、たまにある。
たとえば、次の講演までにちょっと時間的にゆとりがあるとか、早い時間帯に講演が終わって、帰宅までに少しほっとする時間を持つことができるという時だ。
そんな時間に、ふらりと立ち寄りたくなるところが、いくつかあるという話を書いたのだった。
私が若手の駆け出し時代の頃にベテランの先輩ワーキングマザーが、あまりに多忙だったり、つらいことがあったりした日で、時間が許す日には、喫茶店でお茶を飲むことにしていたと聞いたことをよく覚えていたからだ。
そこでクールダウンして、「さーて、ここからはママするぞ!」と、ビジネスモードからママモードへと、気持ちを切り換えていたのだとか。それは、ふらりと・・・というよりは意識的な行動だから、「ふらり」な私の場合とは違うが、オンとオフの切り換えという意味では同じなのかも。
私は足の向くまま、気の向くままに、直感で動くのだけど、「少しゆとりがある時、何をするか、どこに寄るか?」は人によって随分と違うのだろうと思う。
さて、私がふらりと立ち寄る店は以前とあまり変わらない。
まずは、書店。書籍は殆どネット購入しているが、好きなジャンルのコーナーに行き、どんな本が出ているのかを眺めるのは楽しい。「ここからここまで全部ください」という大人買いを一度してみたいと私が思うのは書籍だ。1日中、そこにいることも大丈夫なくらい好きな場所だ。
そして喫茶店で、ひとりのんびりお茶を飲むのも好き。といっても、時間が空いて、気持ちが求めているなと思う時に限られるので、よく考えると、そう頻繁に行っている訳ではないのだけれど、ふらふらーと行きたくなる時がある。大の紅茶党で「アールグレイ津村」と自称するくらいに紅茶が大好きな私は、紅茶がおいしい店が見つかると、嬉しい。温かい紅茶を飲んだり、たまーにスイーツも食べたり。
講演前は、決して満腹になれないが(頭が回らなくなる感もあるし、何より苦しくて、思うように口まで回らない感もある)、終了後はかなり空腹感を覚えることがあり、食事しちゃったこともあるけど(笑)。
そして、ドラッグストアとか雑貨屋。あれこれと小物を見ることは楽しい。「へえー、こんな商品が出てるのか」と面白い発見があるのだ。ハンカチ、化粧品、文具、アクセサリー、帽子や傘、冬場だと耳あてとか手袋まであって、アイデア商品なども見つけたりして、結構楽しめる。
殆ど眺めるだけで終わるが、ついこの間まで髪が長かったので、飾りゴムを買うことが幾度かあった。またばっさりと切ったので、いくつか集めたヘアグッズはご縁がなくなりそうだな。いつの日かまた髪を伸ばすかもしれないので、大事にとっておこう。
そうそう、やはりコンビニも好きだ。一番好きな商品は、飴(笑)。さすがに「大阪のおばちゃん」と言われそうだけど、コンビニには、飴の新商品がよく出ていて、バラエティに富んだ品揃えがあるので楽しい。
デパートでも覗くフロアは決まっていて、食器や調理器具など、リビング用品のフロア。鞄や靴、洋服なども、もちろん好きだけど、なぜか先にそのフロアに行きたくなるのが、自分でも面白い。家具などを見るのも楽しい。
それから、水のそばに行きたくなるのは、私らしいかな?海が一番大好きだけど、池でも、川でも、湖でも、水があれば大満足。生き物も好きなので、動物園と水族館は大好き。そばにあると、行きたくてうずうずする(笑)。
一度は講演の後に海のそばの遊園地+水族館?に立ち寄って、海やイルカを見て満足して帰ったことがあるけど、スーツ姿で軽く浮いていたかも(笑)。
「ふらりと、どこかに立ち寄ること」。好きなものに囲まれてほっこりしよう、好きな何かと出会えればいいなーという、ぼんやり、まったりした行動だけど、これが私の「ストレスコーピング」でもあるのだろう。
ビジネスモードを緩めることが目的になっていると思うので、「気の向くまま」が鉄則で、あんまり、必死にやらないのがポイントというのは今も昔も変わらない。
ふと時間が空いた時、あなたは、どこにふらりと立ち寄りたくなりますか?心の栄養補給やほっこりタイムが楽しめるといいですね。
(2015年3月)