エッセイ

フェリアン一周年/おだゆうこ

この春、大阪・京都フェリアンは1周年を迎えた。

長かったような、あっという間だったような不思議な感じがしている。

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想えば…大阪・京都とも新たな場所選びのため、時間さえあればインターネットを検索し、仕事の合間に不動産屋に通い、現場に行くという日々。現地にいって、来談者目線で考えると、「ここは人とすれ違いすぎる・・・ここにごみ収集があるのは・・・ここではアクセスしにくい・・・ここは不穏な空気を感じる・・・」などなど、気持ちよく来てもらえるよう、カウンセリングのイメージを膨らませると、やはりどこでもいいわけではない。現実的・時間的制約がある中、どこで折り合いをつけるか、どのように意思決定をするかと言うプロセスは、今振り返ってみるとちょっとした人生の転機とも言え、カウンセリングプロセスと通じるものがある。

万全の場所ではなくても、折り合いとご縁の中で決定した事を引き受けていくプロセスもまたおもしろかった。「住めば都」というけれど、そうなっていくように、家具をそろえたり、グリーンや置物を飾ったり・・・京都においては、2部屋を稼働させるために、防音壁の設置や窓枠エアコンの設置を所長と二人で頑張ったことも私にとっては忘れ難い。「ゆうちゃん、防音壁をネットで注文したし、壁のサイズにカットしてつけよっか」と気軽に言われた日にはびっくり仰天だった。なんともずっしりと分厚い防音壁を、壁やドアのサイズピッタリと合うように寸法をはかり、両面からずれないようカットしていく正確な技術を私は持ち合わせていません!と思いつつも、やるしかない中で、適当さと思い切りはどの分野にも必要だということがわかったり、向いてないとおもっていた作業が結構面白かったり、本来業務以外の作業をスタッフと共有する中で意外な一面に気付いたり、とりとめのない話をする時間はとても有意義だった。やったことのない事をやり遂げた達成感も格別だったし、「何でもやろうと思えばできるんだぁ」と自己評価もぐんとあがった気がする。人だけでなく、物と向き合い、手ごたえを感じながら自己調整したり、自分の一面に気付いていくプロセスも貴重だったし、手をかけていくほどに「愛着のある都」になっていくものだということも体感できた。

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そういった手作り感のある(ある意味スマートな完成された部屋ではないのだが)部屋だからだろうか、クライエントさんが来る前には、部屋を片付け、気持ちよく迎えられるように心がけているからなのか、それともたまたまなのか、「お邪魔します」といって出入りするクライエントさんがいらっしゃるのも、フェリアンならではだ。

空間づくりだけでなく、カウンセリング講師活動の本来業務もフェリアンになって新しい試みが数多く始まった。カウンセリングにおけるインフォームドコンセントの意味を吟味しなおしたり、初回の出会いを大切に丁寧にする取り組み、カウンセラーだけでなく予防啓発(講師)スタッフや事務局も交えてクライエントさんの利益を見直したり、予防啓発スタッフを中心にフェリアンの持ち味を生かしたEAPプログラムを開発し、提供することが決まったり、カウンセラーと予防啓発スタッフが共同で行う事業も増えた。

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最近、フェリアン大阪では、支援者支援の為の「フェリアン・カフェ」がオープンした(第一回目のカフェメニューは苺大福!!)。自分だけではできない、難しいと思うことを、他のスタッフが励まし支えてくれたり、時には厳しく持っている力以上を引き出されたり、自分のやれる範囲を徐々に更新してきた一年だったように思う。一方で自分が苦手なことを他のスタッフがすんなりと引き受けてくれたり、得意と苦手が異なる集団と言うのはうまく機能すれば本当に快適だということも体感してきた。

まだまだ歩き始めたばかりのフェリアンだから、これからの道のりには2歳の壁(自己主張期)があったり、学童期における勤勉性が必要だったり、思春期を迎える頃には色々な揺れもあると思うが、女性ライフサイクル研究所時代からの知の蓄積と豊かな経験をベースに、これからも共同研究(年報)を通じて共に歩んでいける心強さも感じつつ、一年一年成長していきたいと思う。日頃の活動に賛同し支えてくださっている皆様へ、また様々なきっかけ(問題縁も一つのご縁の形)でフェリアンと新たにつながってくださった皆様に感謝の気持ちを込めて、2年目のフェリアンもどうぞよろしくお願いします!(2015年4月)

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