エッセイ
団士郎さん家族漫画展 / 桑田道子
団先生の家族漫画展が6月27日(土)~7月5日(日)まで京阪三条駅コンコースで開催されている(東日本・家族応援プロジェクト)。
手元でよむのに慣れている漫画が、大きなパネルになっている。いつもと違うスタイルで、見上げながらテキストを読み、絵を眺めていると…、自分も3頭身の登場人物になって、そのエピソードに混ざるかのように(時に相談を受ける側として、時に登場家族の一員として)ストーリーにひき込まれていく。
漫画のテキストから、「こんな声のかけ方があるんだな」「こんな働きかけがあるのか」と具体的に教えてもらったり、不作為での働きかけ(これができるのは援助者としての経験も余裕もないと難しく、私はまだまだだ)を知り、なるほどと思う。
漫画を通して、いろいろな家族のエピソードに触れながら、自分の心がどう動くか、みつめるきっかけをたくさんもらえる。どんなところに関心を持ち、どんなところに「やっぱり」と思い、共感し、痛みや喜びを感じるか。この心の動きに向き合っていくことは、家族支援に携わり、できる限り彼らを理解し、できるならばエンパワメントしつつサポートを提供したいと考えている私にとって、「家族をみる力」にダイレクトに役立つことだと実感している。
「こんな背景のある家族はこうなりやすい」「このタイプはこんなことが起きがちだ」と偏見や思い込み、個人的価値観に縛られて、家族がみえなくなってしまいかねないところを、3頭身の彼らが、「こんな可能性もあるし、こういうことも考えられるし、今回はこんな結果だけどこの先どうなるかはわからないし、家族って実に味のある集まりだ」と教えてくれ、柔軟な視点を養ってくれる。
ひとりひとりに歴史があり、運がよかったり不運なことが起きたり、濃い薄いの濃淡がありながら、つながりを維持している姿に、ギュッと心が掴まれる。
今回の展示は壁に数取器がとりつけられ、「いいね」と感じたら、自分でボタンを押し、カウントされる仕組みになっている。それを見ながら、「こっちの方がいいねが多いんだ、意外!」と思ったものもあった。これも私の価値観に、また新しいものの見方が加えられる瞬間だ。
今春にはニューヨークでも漫画展が開催されていたので、英語バージョンもあわせて展示されていた。
文化的・社会的背景が異なる海外の反応はどんなだったのだろう。特に「家族」は、そういった社会的規範や価値観が強く影響を与えるように思うので(内と外とをわける文化や個人と集団の意識が日本と米国では異なっているように思う)、家族の物語に、どのような感想をもたれたのか、また団先生に聞かせていただける機会を楽しみにしている。
駅での展示期間は日が限られているが、WEB会場も設置され、こちらは駅とは別作品が約1年間展示されている。
(2015年7月)
写真:駅会場で無料配布されている特別編集の小冊子