エッセイ
部活の引退/窪田容子
夏休みの終わり、中学生の息子が、バスケットボール部を引退した。当たり前のことだが、運動系の部活の多くは、優勝するほんの一部の子たちを除いて、試合に負けて引退を迎えることになる。息子のチームは優勝するほどの実力はない。2年半がんばってきた部活だから、できるだけ勝ち進み、悔いなく戦い、良い負け方をして引退を迎えてほしいと思っていた。
息子のチームメートは、穏やかな優しい性格の子が多く、いつも和気藹々とした雰囲気だった。ただそれが、押しや粘りの弱さにつながり、試合でマイナスに働くことも少なくなかった。最後の夏の公式戦は、いくつかの試合を勝ち進んだ。最後の試合は、第3クォーターまでに、十数点の差をつけられて負けていた。しかし第4クォーターでは、いつになく粘り強くじりじりと点差を縮め、2点差まで追いついた。あと、1ゴール!逆転を祈った。ブザービーターも祈った。しかし、ゴールが入らぬまま試合終了となり、負けてしまった。だけど、いい試合だった。
タオルを頭からかぶって、いつまでも肩を振るわせている息子。一緒に戦った仲間たちも、大泣きをしている。最後のミーティングでは、顧問の先生も気持ちがこみ上げて言葉を詰まらせていた。接戦だったため最後の試合に出られなかった仲間たちは、悔しいけれど、大泣きができずにいる。それぞれ、いろいろな思いが心を過っているだろう。そんな、子どもたちの姿が眩しい。
厳しい練習、毎日の朝練、よく怒る顧問の先生、試合の応援に来ては誉めてくれるミニバスの時のコーチ、嬉しい思いや悔しい思いを共にした仲間たちとの時間・・・。いろいろな人との関わりの中で、教室だけでは得られなかったことを、たくさん身につけたのだろうと思う。長い人生の中の2年半ではあるが、この体験が、この先の子どもたちの人生の力に、きっとなるのだと思う。
(2015年9月)