エッセイ
「もっと駅弁を!」/津村 薫
出張で新幹線を利用する時の楽しみは、駅弁。そもそも出張の際の喜びのひとつが、その土地その土地の美味しいものを堪能することだったりする。
フェリアンのFacebookに出張先での食事の写真をアップすることもあるが、その写真を見た友人たちから「えーと、出張やったね?」と時々ツッコまれる。
やっぱり「駅弁」という名前だけで、胸が躍るよね。最近は、「祇園」というお弁当が気に入っている(新大阪で「祇園」?とツッコむのは禁止)。なますに湯葉、昆布巻きに生麩、ちりめん山椒ご飯など、私の好物がぎっしりで、大満足。
以前は、「21世紀出陣弁当」というのが大好きで、必ずそれを買っていた。最近それは販売されていないので、ちょっと残念。野菜の炊き合わせに昆布巻き、こんにゃくの味噌田楽などが入っていて、器も素敵でとっても気に入っていた。
そして、なんといっても「ひっぱりだこ飯」が大好きだ。陶器製の釜飯のような器に入っているので、ちょっと重い。この器を捨てるのもしのびないので、なかなか買えない。
そのため出張の帰り道に買って帰り、自宅で食べたりする。このお弁当を紹介したホームページにも「お土産に最適」とあるので、この購入方法はナイスアイデアなのかも。そして、さすがに明石名物。「どんだけおいしいんだ~!」と叫びそうになる煮蛸に、ジューシーな蛸飯!「ひっぱりだこ」というネーミング通り。
夕方に新大阪に着く時は、夫のお土産に駅弁を買うことがある。夫の好みは私とはまるで違い、牛たん弁当とか、ステーキ弁当とか、お肉たっぷり・がっつり系を喜ぶ。それに野菜をちょっと料理して付け合わせを作り、お手軽夕食になる訳だ。「向こうではこういうものが美味しかった」という話もちゃんと夫に教えてあげる(押しつけがましい妻)。
何度もしつこいようだが、仕事だ(笑)。あ、このお肉系のお弁当も「すごい柔らかくて美味しいー」と夫は喜んでいて、どれも絶品らしい。
あれこれと種類を制覇していくのではなく、気に入っているお弁当を何度も食べてしまうのが私の駅弁愛用パターンだけど、「よーし、またあれ食べよう!」と楽しみにしている。
手の込んだ食材を味わうと、「良い旅をー!」「良い仕事してやー!」というエールをもらっているかのようだ。その土地を愛し、その魅力を伝えようとする作り手の魂が、駅弁にはこめられているような気がする。心も体も栄養補給して、いっちょ頑張ろうじゃないですか。
(2015年11月)