エッセイ

第二の人生 秋/森﨑 和代

今年の4月、約11年3か月間の単身赴任生活を終え無事に帰国した夫。あれから約半年間、夫は自宅から職場に通い、わたしたち夫婦は久しぶりに自宅で一緒の時を過ごした。

夫との新たな生活は、「単身赴任が長引くと、その後の生活はお互い大変でしんどいらしい」という周囲からの情報や心配をよそに、また帰国前に「わたしも今は仕事してるし、単身赴任前のような上げ膳据え膳の生活はもうないからね―!」と宣言した甲斐もあってか、なかなか快適な共同生活だった(エッセイ『第二の人生 春』参照)。

もちろん、これまでわたしのテリトリーだった場所に夫が新規参入してきたことから、家事のやり方の違い、感覚の違いなどなど、時に意見の食い違いから喧嘩もした。が、それもまた「一緒に暮らす」ということ。そして日常生活は思いのほか短時間で、「当たり前の生活」になり、二人で助け合いながら、またお互い仕事をしながら、ほのぼのと生活は回っていた。

夏には栃木県に娘を訪ね、そのついでに東京観光をしたり、お墓参りを兼ねて舅を訪ね九州旅行をしたり・・・。そして夏が過ぎ秋になり、夫は退職を迎え、第二の職場へ再就職することが決まり意欲を燃やすようになる。夫はわたしに新しい赴任地に同伴してほしい気持ちがあったようだが、すでに来年度の仕事を幾つも頂いているわたしの仕事柄、現実それは難しい。夫に同伴できないことを割り切っていながらも、その時期が近づくにつれ、夫が行ってしまうと思うだけで、自宅で、電車の中で、歩いていても涙があふれるという寂しさに襲われた。

わたしはこの11年余りの間に、一時帰国した夫をまた赴任地に送り出すということを幾度もしてきた。しかしこんな気持ちになったのは初めてのことで、かなり戸惑った。そして先月、とうとう夫は次の職場へとへと単身で赴任して行ったのだった。

大丈夫かわたし・・・。ちゃんと仕事ができるのか・・・。

するとこれまた予想に反し、意外になんともなく、わたしはとても強かった!

夫が赴任した後、秋の講師繁忙期に入ったことも幸いしたと思うが、毎月催す女子会、昨年から決めていた学生時代の部活友人たちとの温泉旅行、妹家族の帰省に伴う実家家族との旅行、高校の同窓会などで11月前半まで賑やかな秋の行事に彩られ、夫がいない生活が短期間のうちに当たり前になった。というより、実際は一緒に過ごした半年間が夢の中の出来事のような感じで、また夫のいない生活に戻っただけだった。

ん??あの涙あふれた日々は何だったのだろう?あまりにも現金すぎる?わたし・・・。

いいえ!このことから第二の人生 秋に感じたことは、11年間あまりの離れ離れの生活は、お互いの心身の自立を促進したこと、そしてお互いを大切に思っているということをさまざまなコミュニケーションツールを使って、コミュニケーションを怠らなかったこと。そのことで夫婦のきずなは結ばれていたということだ。えへへ・・・。

食欲の秋に、ごちそうさまのエッセイでした。めでたし、めでたし!(笑)

(2015年11月)

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