エッセイ

いざ、快適な空の旅 津村薫

ずっと以前に二度ほど書いたことがあるが、高所恐怖があり閉所恐怖気味でもあるので、飛行機は本当に苦手だった。と過去形で書けることに自分で感激してしまうくらいだ。

傍目にはおとなしく搭乗しているように見えたと思うが、実際は離陸する際に一緒に踏ん張ってしまうとか、揺れると緊張で体がギュッと硬くなったり、本当に大変だった。修学旅行の団体と乗り合わせると、高度を上げたり、揺れる度に大抵「キャー」という悲鳴が起こり、「修学旅行生の皆さん」とCAから呼びかけるアナウンスが入り、「揺れても飛行の安全性に支障はありませんので、ご安心くださいね」という優しい説明がある。

可愛い子たちやなあと思いながら、そのアナウンスは自分にも役立っていた。飛行機が苦手な者にとって「揺れても飛行の安全性に問題ない」という説明は何度聞いても安堵する。一方で「機長の指示で客室乗務員も着席いたします」はドキドキの説明だ。

いつ頃からかははっきりしないのだが、揺れても目を閉じて、汽車にガタゴト揺られて、気持ちの良い景色を窓から眺めている自分をイメージしたり、力を抜いてリラックスしたり、深呼吸をしたり、ストレッチをしたりと自然と対策できるようになってきて、搭乗がそこまで強い緊張を伴うものではなくなってきた。

音楽を聴いたり、本を読んだり(私のkindleが最も活躍するのは機内だ)と楽しんで過ごすこともできるようになり、2時間程度ならむしろ「お天気だといいなー」と楽しんで乗れるようになってきたのがすごいと自分でも思う。離着陸の美しい景色を堪能できる晴天だと本当に嬉しい。

よく遠方の出張に同行する森﨑がその私の成長?ぶりを母のような気持ちで見てくれていたらしく「感慨深い」「よくぞここまで」な感じで喜んでくれている。心配をかけてきたんだな、申し訳ないと思ったり、本当に長く一緒に出張してるよねと私も感慨深い思いになったりする(多分20年近い)。

当初は、窓から空が見える席に座っても外を覗けないという、もったいなさ。でも人は変われば変わるもので、空を眺めて動画や写真を撮りたいので(機内Wi-Fiが充実したのも嬉しくありがたいことだ)、今は森﨑と二人で並んで座ることはなく、お互いに窓際の席に座っている。搭乗の手配をしてくださる研修主催担当者さんたちが異動などで交代してもそれは引き継がれて、「津村先生と森﨑先生はどちらも窓際のお席が希望で、隣に座らなくていいのでしたね」と毎回確認を受ける。その通りです。笑

また今月も、飛行機を利用する出張がある。
いざ、快適な空の旅。

それを支えてくださる、空の安全を守る方たち、
無事を祈ってくれる家族や仲間にも、
幾度も出張に同行し、機上で共に過ごす仲間にも感謝。 


(2024年10月)S__63070262空.jpg

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