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からだを動かそう/津村 薫

「習慣的に運動をしている人?」と講演の場でお聞きすると、手を挙げる方は、そう多くない。「普段から運動不足だし、からだを動かさないといけないのはわかってるんだけど、なかなか・・・」と、その大切さを理解しつつも、行動に移せていない人が多数派のようだ。

「アクティベーション」という言葉がある。リラクセーションの反対語で、心身を活性化させることを指す。代表的な活動は運動、スポーツである。高いフィットネスの持ち主はストレス耐性が高く、心臓病やストレス疾患発症のリスクも低い。リラクセーションの目的は不安の低減だが、アクティベーションも不安を低減させることが証明されているという。アクティベーションによる効果は、下記が見込まれる。

・短期的効果→体を動かして余分なエネルギーを抜くことによって、蓄積された日々のストレスを軽減する。

・長期的な効果→生理的なストレス耐性を高い状態で維持できる。ストレスに満ちた生活を強いられても、体が自然に余裕をもって対応できる。その結果、ストレスの蓄積を少なく抑えられる

運動、スポーツなどによって、メンタルヘルスは大きく変化することが確認されている。

「健康を疾病の対比としてとらえるのではなく、より高いウェルネスを達成するために、日々のライフスタイルでどのような行動を行っているかによって、自らの健康度を評価する必要がある」と大野らは述べている(ストレスマネジメント研究会、2002)。

これも仕事柄、多くの方と話していて思うことだが、ストレス対処法というと、「リラクセーション」のイメージが強く、マッサージや整体等の流行の背景には、「緩める」ことの重視が大きいように思う。メリハリのない生活は問題で、緩めることにも大きな意義がある一方、能動的にからだを動かすことが、逆に疲れにくいからだをつくり、心を鍛えるという考え方もいわれる。

「アクティブレスト」は、アクティブに活動しながら心身のリフレッシュを図るという意味合いで、「自ら能動的に動く」という考え方が底流にあるという。もっとも代表的なものは、マラソン選手がゴール後にトラックを軽く走るような、整理体操的に主運動を軽めに行うものだ。疲れたからだのメンテナンス法を身につけ、自己管理能力を高めることが勧められている。筋力・持久力・柔軟性の三つが特に重要で、これらのレベルが高いほど、人は疲労しにくいのだという。

疲労が蓄積すると、我々は日常生活でさまざまなトラブルを起こしやすくなる。妙につまずく、茶碗やコップを倒す、人ごみで他人にぶつかる、これらはスポーツ選手が「からだのキレがない」と表現する状態であり、疲労によって筋肉などに命令を伝える神経の働きが鈍くなっているのではないかと考えられている。疲労によって鈍くなったからだのキレを取り戻すよう、アクティブに動くことが大切なのだ。

たとえば人が入浴する際、「お風呂が疲れをとってくれる」という受動的な発想をしがちだが、石鹸でマッサージをしたり、疲労部位にお湯と水を交互にかける交代浴をすることなどで、積極的に疲れをとる発想が大切だという(山本、2006)。

私自身は運動神経が鈍く、運動には無縁な青春を送った。大人になってからも、運動とは程遠い生き方をしてきた。大人になってようやく、下手は下手なりに面白いものなんだとわかり、からだを動かす楽しさに目覚めたのだと思う。

うまくできなくても、カッコ良く素敵でなくても、自分のペースで楽しむことを誰にも止められない。全身のストレッチをすると、なんと体が喜ぶことだろう。スクワットをすると、足がシャキーンとするようだ。誰とも比較されず、上達を要求されずにする運動が、こんなに楽しいとは思わなかった。自分が「面白そう、やってみたい」と思ったことをやったのが良かったのだろうとも思う。

そのうち、からだを動かすと、思考までが前向きになることを実感した。からだが喜ぶと、こころも元気になるという体験は感動的だった。それほど私の身体感覚は鈍かったということだろう。からだが喜ぶという体験をあまり知らずにやってきたのだから。

「疲れていても、ストレッチだけはしておこう」とか、「肩甲骨をグルグル動かしてほぐしておこう」など、むしろ疲れをとったり、良い状態になるために動くことの大事さも、最近は強く実感するようになった。

からだを動かすこと、していますか?生活習慣病を遠ざけるためにも、元気にいきいきと生き続けるためにも、からだを動かすことを意識してみましょう。

【参考文献】 ストレスマネジメント教育実践研究会編(2002)『ストレスマネジメント・テキスト』東山書房 山本利春(2006)『アクティブレストのすすめ~疲れたときは、からだを動かす!~』岩波書店 津村薫(2009)「習慣的に運動すること―からだを動かそうプロジェクトの実践を通じて―」『女性ライフサイクル研究第19号』所収

(2014年6月)

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