トピック

「別れの悲しみ」との向き合い方/下地久美子

人生には、出会いの数だけ別れがあります。なかでも、恋人との別れ、離婚、友人や家族、ペットとの死別は、言いようのない深い悲しみをもたらします。

フェリアンのカウンセリングでも、つらい別れを経験された方のお話をお聴きすることがよくあります。

別れに伴う感情は、相手に対する思いが強ければ強いほど激しいものとなります。時には、自分自身の生きている意味が失われ、何をしても喜びや楽しみを感じられなくなったり、人と会うことも億劫になってしまうこともあるでしょう。

また、「別れ」というのは、現実的な人との別離の他にも、これまで築いてきた地位を失うこと(転職や退職など)や病気により健康を損なうこと、子どもが巣立っていってしまうこと(進学や就職、結婚など)、引越しをして別の場所で暮らすこと、加齢により若さを失うこと等もあります。

大切な人やものを失う体験を心理学では、「対象喪失」といい、対象喪失後に生じる一連の心理的過程を「グリーフ(悲嘆)」と呼びます。愛する人やものを失った時に、悲嘆にくれるのは自然な反応で、絶望感、後悔、自信喪失、罪悪感、怒りなど、さまざまな情緒を体験します。やがて、感情の嵐が通り過ぎたあと、「別れ」を受け入れ、自分なりのストーリーや意味づけがなされます。そのプロセスを経て、人は前へと進んでいくことができるようになるのです。

別れのつらさを受け入れていくには、3つのT、「Time」(時間)、「Tear」(涙)、「Talk」(話す)が必要です。

「別れ」と向き合うのは、大変な苦痛を伴いますが、時間がたつにつれて、感情の激しさも和らいできます。

泣くことは、緊張を解放し、心のバランスを保つ効果があります。そして、否定的な感情を他者に打ち明け、それを受け止めてもらうことは、癒しへとつながります。

つらい別れを経験すると、そのことについて考えるのを避け、早く忘れようとする人もいますが、結局は、悲しみの渦から抜け出せなくなってしまうことが多いものです。

フェリアンのカウンセリングでは、別れのつらさを見つめ、自分の経験したことを受け入れ、それを抱えながら生きていけるようになるプロセスを共に歩んでいきます。それは、立ち直るとか、乗り越えるというのではなく、失ったものを十分に悼み尽くし、受け入れやすい形にして、心の中にしまうというものです。

別れの苦しみから逃げずに、自分自身をふりかえり、出来たこと出来なかったことに思いを馳せながら、そのことが自分の人生に与える意味に気づくことができれば、ゴールは、もうすぐです。

再び、新たな人間関係を築いたり、新たなことに挑戦する勇気がわいてきます。 (2014年9月)

  1. 一覧へ
ページトップへ戻る