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発達障害による生きづらさ/下地久美子
「発達障害」という言葉が広まるにつれ、フェリアンでも、「もしかして、私は発達障害なのでは?」とか、「うちの夫が、発達障害で困っているんです」などの相談が増えてきました。
「発達障害」とは何かというと、脳機能の発達にアンバランスさがあり、特定の分野は得意であるのに、ある分野は極端に不得手であるなど、発達に凹凸がある状態を指します。
例えば、人とのコミュニケーションは苦手であるけれど、事務作業は非常に正確にできたり、忘れ物やミスはしょっちゅうあるものの、人が思いつかないような発想ができるなどです。もちろん、発達障害の人のみならず、誰にでも得意不得意はありますが、その凹凸が大きすぎて、日常場面で困ったことがあまりにも多く、生きづらさを感じている場合、「発達障害」という視点からみることが役に立つことがあります。
「発達障害」のある人とない人は、明確に分類できるものではなく、連続体にあるものです。そして「発達障害」は、病気でも性格の問題でもありません。ですから、本人や周りにいる人が、その特性を理解し、うまく対処することができれば、特徴そのものは変えることはできなくても、生きづらさを軽減させることができます。
おとなになってから気づかれやすい「発達障害」は、アスペルガー症候群とADHD(注意欠陥多動性障害)があります。
アスペルガー症候群
①<社会性の障害>他人への関心が乏しく、人の気持ちを理解するのが苦手。
②<コミュニケーションの障害>会話が成り立ちにくく、人の表情や場の空気を読めない。冗談を真に受けてしまう、自分の興味のあることを一方的に話す。
③<想像力の障害>環境の変化や予定の変更に弱い。
他にも、聴覚や嗅覚などの感覚過敏がある。
ADHD(注意欠陥多動性障害)
①<多動>じっとしていられない、しゃべりすぎる、動き回る、危険なことする。
②<不注意>集中が続かない、忘れっぽい、物をよくなくす、一定時間人の話が聞けない、ボーッとしている。
③<衝動性>後先を考えずに行動する、順番が待てない、カッと感情的になる。
このような特性を持つため、アスペルガー症候群傾向の人は、友だちができにくく、職場などで孤立してしまいやすく、思ったことをそのまま言って相手を怒らせてしまったり、自分のやり方にこだわってチームワークを乱したり、同時に複数のことができなかったり、建前と本音が理解できなかったりして、「わからない」ことだらけの不安でパニックになってしまうことがあります。
また、ADHD傾向の人は、仕事中に落ち着かず、上司の話が聞けなかったり、会議でぼんやりしてしまったり、片付けや整理整頓が苦手であったり、ミスが多かったり、書類などの提出期限が守れなかったり、仕事や家事の段取りが悪かったり、約束をすっぽかしてしまったりする他、人と口論になりやすい面もあります。お金の管理ができず衝動買いが多く、転職を繰り返しがちで、自分をコントロールできないことにもどかしさを感じやすいです。
「発達障害」を抱える人は、うまくできない自分を責めたり、周りから怠けている、悪気があってやっていると誤解を受け、自己嫌悪に陥ってしまったり、自信なくしたりしがちですが、それが脳の特性による生きづらさであることがわかれば、特性を活かしたり、補ったりしながら、うまくつき合っていく術を具体的に考えていくことができます。
身近な人が「発達障害」の傾向がある場合でも、「わざとやっているわけではなくて、そういう特性のある人なのだ」とわかれば、お互いのために、より良い関わり方を見いだせるのではないでしょうか?
「発達障害」は病気ではないので、必要なのは治療ではありません。そのような傾向があることを理解し、自分なりに対策を立て、状況に対応し、精神的な負担を軽くすることです。そうやって少しでも生きやすくなることが、「発達障害」と上手に付き合っていく方法であると思います。
フェリアンのカウンセリングでは、「発達障害」の傾向があり、生きづらいと感じている人が、まず自分の苦手なことと得意なことに気づき、自分の持っている力に目を向けることからはじめます。そこから、自分の言動をふりかえり、「こういうときには、こんなふうに対応しよう」と対策を練り、周りの協力を得ながら、生きやすくなるコツをつかんでいくお手伝いをしています。
また、夫や家族など、身近な人に「発達障害」があり、どう関わっていいかわからないというときも、問題を整理しながら、お互いが気持ちよく暮らせる方法をともに考えていきます。
※フェリアンでは発達検査は行っておりませんが、ご希望の方には、発達検査を受けることのできる機関をご紹介させていただいています。
(2015年10月)